ニール・サイモン作品年表

  • 2016.09.02 Friday
  • 22:00

 

「ニール・サイモン作品年表」です。講座「ニール・サイモンの世界」の資料になります。(2016年9月2日)


 

 

 

   ニール・サイモン作品年表 

      (Neil Simon 1927-2018)

 

 水色=戯曲集第1巻  緑=第2巻 

 赤=第3巻  青=第4巻

 紫=第5巻  茶=第6巻

 桃色=ミュージカル台本 (翻訳出版なし)

 

戯曲集は『ニール・サイモン戯曲集』

 (早川書房)

<映画>はオリジナル脚本の作品のみ

映画化作品を含む映画一覧は

     ⇒ ニール・サイモン劇の映画化・

      脚本作品リスト

・ニール・サイモンの講座については

     ⇒ ニール・サイモンの世界 (講座概要)

 

1960年代


 カム・ブロー・ユア・ホーン

  Come Blow Your Horn (1961)

 リトル・ミー

  Little Me (1962)

 はだしで散歩

  Barefoot in the Park (1963)

 おかしな二人

  The Odd Couple (1965)

 スイート・チャリティ

  Sweet Charity (1966)

 紳士泥棒 大ゴールデン作戦

  After the Fox (1966) <映画>

 星条旗娘

  The Star-Spangled Girl (1966)

 プラザ・スイート

  Plaza Suite (1968)

 プロミセス、プロミセス

  Promises, Promises (1968)

 浮気の終着駅

  Last of the Red Hot Lovers (1969)

 

1970年代


 ジンジャーブレッド・レディ

  The Gingerbread Lady (1970)

 おかしな夫婦 <映画>

  The Out-of-Towners (1970)

 二番街の囚人

  The Prisoner of Second Avenue (1971)

 サンシャイン・ボーイズ

  The Sunshine Boys (1972)

 名医先生

  The Good Doctor (1973)

 神様のお気に入り

  God’s Favorite (1974)〈翻訳なし〉

 カリフォルニア・スイート

   California Suite (1976)

 名探偵登場 <映画>

  Murder by Death (1976)

 第二章

  Chapter Two (1977)

 グッバイガール <映画>

  The Goodbye Girl (1977) 

 デュエット

  Theyre Playing Our Songs (1977)

 名探偵再登場 <映画>

  The Cheap Detective (1978)

 

1980年代


 映画に出たい!

  I Ought to Be in Pictures (1980)

 昔みたい <映画>

  Seems Like Old Times (1980)

 フールズ

  Fools (1981)〈翻訳なし〉

 思い出のブライトン・ビーチ

  Brighton Beach Memoirs (1983)

 おかしな二人 (女性版)

  The Female Odd Couple (1985)

 キャッシュマン <映画>

  Max Dugan Returns (1983)

 ビロクシー・ブルース

  Biloxi Blues (1985)

 スラッガーズ・ワイフ <映画>

  The Slugger’s Wife (1985)

 ブロードウェイ・バウンド

  Broadway Bound (1986)

 噂

  Rumors (1988)

 

1990年代


 ヨンカーズ物語

  Lost in Yonkers (1991)

 あなたに恋のリフレイン <映画>

  The Marrying Man (1991)

 ジェイクの女たち

  Jake's Women (1992)

 23階の笑い

  Laughter on the 23rd Floor (1993)

 グッバイ・ガール

  The Goodbye Girl (1993)

 ロンドン・スイート

   London Suite (1995)

 求婚−プロポーザルズ−

  Proposals (1997)

 おかしな二人2 <映画>

  The Odd Couple II (1998)

 

2000年代〈以下翻訳なし〉


 ディナー・パーティ

  The Dinner Party (2000) 

 ブロードウエイから45秒

  45 Seconds from Broadway (2001)

 ローズのジレンマ

  Rose's Dilemma (2003)

 オスカーとフェリックス

  Oscar and Felix: A New Look at

  the Odd Couple (2004)

 


 

*資料作成

 小島真由美(演劇学部専任講師)

 広川治(オンライン映画演劇大学代表)

 

 

ニール・サイモンの映画リスト

  • 2016.09.04 Sunday
  • 23:00

 

ニール・サイモンの映画リスト」の一覧です。講座「ニール・サイモンの世界」の資料になります。(2016年9月4日)


 

 

 

 ニール・サイモンの映画リスト

     映画化とオリジナル脚本 —

 

 青=オリジナル脚本の映画

 他は戯曲の映画化

 (ほとんど全てがサイモン自身による脚色)

 英語題名のみの作品は日本では未公開で

 DVDも未発売の映画

 

  戯曲リストについては

   ⇒ ニール・サイモン作品リスト

  ニール・サイモンの講座については

   ⇒ ニール・サイモンの世界 (講座概要)

 

1960年代


・ナイスガイ・ニューヨーク (1963)

  「カム・ブロー・ユア・ホーン」映画化

   ノーマン・リア脚本

・紳士泥棒 大ゴールデン作戦

    After the Fox (1966)

   チェザーレ・ザヴァッティーニ共同脚本

・裸足で散歩 (1967)

・おかしな二人 (1968)

・スイート・チャリティ (1969)

  ピーター・ストーン脚本

 

1970年代


・おかしな夫婦 

    The Out-of-Towners (1970)

・おかしなホテル (1971)

   「プラザスイート」映画化

・Star Spangled Girl (1971)

   「星条旗娘」映画化

・Last of the Red Hot Lovers (1972)

   「浮気の終着駅」映画化

・ふたり自身The Heartbreak Kid (1972)

    ブルース・J・フリードマンの小説の映画化

・The Prisoner of Second Avenue (1975)

   二番街の囚人」映画化

・サンシャイン・ボーイズ (1975)

・名探偵登場 

    Murder by Death (1976)

・グッバイガール

    The Goodbye Girl (1977)

・名探偵再登場 

    The Cheap Detective (1978)

・The Good Doctor (1978)

    「名医先生」テレビ映画化

・カリフォルニア・スイート (1978)

・第2章 (1979)

 

1980年代


・昔みたい 

    Seems Like Old Times (1980)

・泣かないで (1981)

   「ジンジャーブレッド・レディ」映画化

・わたしは女優志願 (1982) 

   「映画に出たい!」映画化

・キャッシュマン  

  Max Dugan Returns (1983)

・スラッガーズ・ワイフ 

  The Sluggers Wife (1985)

・想い出のブライトン・ビーチ (1986)

・ブルースが聞こえる (1988)

  「ビロクシー・ブルース」映画化

 

1990年代


・あなたに恋のリフレイン

  The Marrying Man (1991)

・ブロードウェイ・バウンド

  (テレビ映画 1992)

・ヨンカーズ物語 (1993)

・ジェイクス・ウィメン

   (テレビ映画 1996)

  「ジェイクの女たち」映画化

・ロンドン・スイート

   (テレビ映画 1996)

・サンシャイン・ボーイズ すてきな相棒

   (テレビ映画 1997)

・おかしな二人2 

   The Odd Couple II (1998)

アウト・オブ・タウナーズ 

  The Out-of-Towners (1999)

   「おかしな夫婦」再映画化

 

2000年代


・スーパー・コメディアンと

 7人のギャグマンたち (テレビ映画 2001)

   「23階の笑い」映画化

・新グッバイ・ガール

   The Goodbye Girl

   (テレビ映画  2004)

 


 

*資料作成

 小島真由美(演劇学部専任講師)

 広川治(オンライン映画演劇大学代表)

 

 

 

ニール・サイモン入門

  • 2016.09.07 Wednesday
  • 23:00

 

 

アメリカ演劇学科の講座「ニール・サイモンの世界」の第1回「劇作家ニール・サイモン」です。講座全体の内容についてはニール・サイモンの講座についてはニール・サイモンの世界 (講座概要)のページをご参照下さい。(2016年9月8日)


 

 

    アメリカ演劇学科講座

  ニール・サイモンの世界

 

     

 

 第1回 ニール・サイモン入門

 

 講師: 小島真由美 (演劇学部専任講師)

 

 

さあ、講座「ニール・サイモンの世界」の始まりです。ニール・サイモンは日本でもミュージカル台本を含む34作品のほとんどが上演されてきた喜劇作家です。でもシェイクスピアのように解説書や研究書が数多く出版されているわけではありませんし、ウィキペディアなどインターネット上の情報も充分なものとは言えません。「おいおい、喜劇は劇場で笑うためのものだ。ああだこうだと論じたり、解説しても意味ないぜ。浅はかな奴だ!」なんて言う人もいるかもしれません。でもだからこそ、「劇場での笑いへと誘導するガイド役がいてもいいじゃないの。私はただ見るだけじゃなくて、する人なの。第一、何もそんなに怒って言わなくたっていいでしょう。何かイヤなことでもあったの?」と反論できるのではないでしょうか。

 

過去にニール・サイモンの舞台を観て、すでにサイモン・ファンになっている人もいると思いますが、日本で一番のサイモン・ファンって誰でしょう? 私です!と手を挙げて言いたいところですが、私などよりもっと熱烈なサイモン・ファンの方々が日本には大勢いらっしゃいます。ファンなどという言い方でお話しするのも大変失礼なのですが、やはり数多くの作品を翻訳、演出なさっている酒井洋子さんがそのトップにおられるでしょう。

 

『ニール・サイモン自伝 書いては書き直し』の解説によれば、酒井さんのサイモン作品との出会いは、コロンビア大学の学生時代に第2作『はだしで散歩』の初演を観た時のことだそうです。作者自身との交流もある酒井さんには、このアメリカ演劇最大の喜劇作家を広く日本で紹介したという功績があります。酒井さんが翻訳なさったサイモンの作品や自伝、そして巻末の解説は何よりも参考になりましたし、この講座でも敬意をもってたびたび引用させていただきます。

 

    

 

あともう一人、ここで名前を挙げておきたいサイモン・ファンがいます。劇作家の三谷幸喜さんです。三谷さんの劇作家としての出発点にはニール・サイモンがいました。学生時代にパルコ劇場で『おかしな二人』を観たのがきっかけで、サイモンの作品『サンシャイン・ボーイズ』から劇団名を「東京サンシャインボーイズ」と命名したほどですから。作者への思いも何度かエッセイなどで書かれておられるんですが、このあたりについては主に『おかしな二人』の回で改めて説明させていただきたいと思います。

 

さて、今回の講座ではデビュー作『カム・ブロー・ユア・ホーン』(1961)から『サンシャイン・ボーイズ』(1973)までの舞台と映画を取り上げます。でもその前に今回第1回では、ニール・サイモンってどんな劇作家なの?という単純な質問にお答えするつもりで、作者の略歴や作品などについて簡単に解説しておきましょう。以下、第1回の講座内容は次のようになります。

 


 

  講座「ニール・サイモンの世界」

  第1回 ニール・サイモン入門

  <目次>

  1.略歴:お笑い好きのドック君

  2.戯曲:代表作と作風の変化

  3.映画:映画化とオリジナル脚本

  4.上演:日本での上演

  5.解釈:(ニール・サイモンについて

       考えるための) 

      13のキーワード

     (1) 作者の言葉から

     (2) 翻訳者、評論家、その他から

 


 

   1.   略歴: お笑い好きのドック君  

 

ニール・サイモンは子供の頃、ドックと呼ばれていました。おにいちゃんといっしょにお医者さんごっこをしていたからです。このドックちゃんが好きだったのがコメディ映画。時代は1930年代。映画がトーキーになってまだ間もない頃でした。チャップリンやキートンなどのスラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇映画)全盛の時代です。のちにこのドックちゃんが人の心の痛みや欠点を診断し、その妙におかしな診断結果を劇場で披露する劇作家へと成長していくのでした。そしてその処方箋には笑いという名の特効薬が書かれていました。

 

マーヴィン・ニール・サイモンは、1927年7月4日にニューヨークのブロンクスに生まれます。ユダヤ系の中流家庭の次男で、兄ダニーとは共にラジオや芸人のための台本を共同で書くようになります。兄がテレビのディレクターに転じてからも20代のサイモンはテレビの仕事を続けていましたが、20代の終りにはバラエティーの仕事だけでは物足りなくなっていました。そして30歳になった年の秋、『カム・ブロー・ユア・ホーン』の第1稿を書き上げます。しかし新人作家としてサイモンの試行錯誤は続きます。自伝『書いては書き直し』によれば、それから何度も、まさに「書き直し」を繰り返し、ブロードウェイでの初演は初稿から3年半後の1961年のことでした。

 

劇作家としてのデビューは33歳の時。続く『はだしで散歩』『おかしな二人』の記録的大ヒットにより、ニール・サイモンはアメリカを代表する劇作家の一人として不動の地位を確立しました。以後、ブロードウェイの劇場で毎年のように作品が上演され、1991年には『ヨンカーズ物語』でピューリッツァ賞を受賞。主にニューヨークを作品の舞台にしており、観客を笑わせるだけなく、人間の弱さや哀しみをほろ苦さと暖かいまなざしと共に描く作風です。ブロードウェイには彼の名を冠したニール・サイモン劇場という劇場まであります。2005年以降、新作の発表はなく、2017年の夏には90歳になります。

 

    

 


 

  2.  戯曲: 代表作と作風の変化

 

ニール・サイモンの代表作は?と質問されると即答がむずかしいのですが、以下の4作品に絞ってみました。

 

『おかしな二人』

 対照的な個性が衝突する喜劇の妙味。やはりどこかおかしいのが人間ってもの。

『思い出のブライトン・ビーチ』

 ユジーン少年の眼を通して描かれる家族の喜びや哀しみが感動的です。

『ビロクシー・ブルース』

 ユジーン少年が成長し軍隊に入隊して訓練を受けます。ユーモラスかつ快活なテンポが舞台映えする作品。

『ヨンカーズ物語』

 親戚に預けられた兄弟を通して描かれる人間ドラマに深い味わいがあります。

 

その他には『はだしで散歩』『サンシャイン・ボーイズ』あたりを代表作に選ぶ人もいるかもしれません。『おかしな二人』『サンシャイン・ボーイズ』『ビロクシー・ブルース』の3作品はそれぞれ一冊の文庫として出版(ハヤカワ演劇文庫)されています。ニール・サイモンの全戯曲のリストは「ニール・サイモン作品年表」としてまとめてありますので、そちらの資料をご覧下さい。戯曲集のどの巻にどの作品が収録されているのか分かるようにしてみました。まだ読んでいない、あるいは観ていない作品がある方は、ぜひこれを機会に読んでみて下さい。

 

  ⇒ ニール・サイモン作品年表

 

     

       ハヤカワ演劇文庫

 


次にサイモンの劇作家としての作風の変化を年代ごとに4つの時期に分けて辿っていきましょう。

 

(1960年代)

  

『はだしで散歩』と『おかしな二人』が大ヒットし劇作家として花開いた時期です。主にニューヨークのアパートを舞台にして、対照的な性格の二人の衝突が生み出す作品を中心に6本発表。その他にミュージカル台本を依頼されて『スイート・チャリティ』など3作品執筆しています。

 

(1970年代)

 

切羽詰まった主人公の状況が笑いだけではなく、ほろ苦さや悲しさを伴って描かれることが多かった時期です。『ジンジャーブレッド・レディ』や『サンシャイン・ボーイズ』など計7作品とミュージカル台本1作品があります。この時期は映画脚本家としての仕事も多く、オリジナル脚本の映画には『おかしな夫婦』や『名探偵登場』そして『グッバイガール』があります。

 

(1980年代)

 

80年代には半自伝的な三部作が書かれています。サイモンの分身のような主人公ユジーンの成長が『思い出のブライトン・ビーチ』『ビロクシー・ブルース』『ブロードウェイ・バウンド』を通して描かれています。この三部作は作品のタイトルの頭文字からB・B三部作と呼ばれることがあります。この三部作の他に4本の新作が発表されており、劇作家として脂が乗っていた時期です。

 

   

『ブライトン・ビーチ回顧録』『ビロクシー・ブルース』PARCO劇場 (1985/1987年) 青井陽治訳・演出

 

(1990年代と2000年代)

 

代表作『ヨンカーズ物語』がピューリッツァ賞を受賞し、劇作家として頂点に登りつめた時期です。60歳を過ぎていたせいもあって、作品の自伝的、懐古的な傾向がますます強くなっていた時期です。90年代には計5本の新作とミュージカル台本1作品があります。2000年代には『ローズのジレンマ』など4本が発表されています。

 

         

     『ヨンカーズ物語』初演パンフレット(1991)

 


 

 

    3.  映画化とオリジナル脚本の映画

 

シナリオ・ライターとしてのサイモンにも目を向けてみましょう。サイモンの戯曲のほとんどの作品が大抵作者自身の脚本で映画化、またはテレビ映画として映像化されています。映画化されていないのは『神様のお気に入り』『フールズ』『求婚−プロポーザルズ』の3本と2000年代の4本のみです。その他に『名探偵登場』『グッバイガール』など10本のオリジナル脚本を執筆しています。これらの映画作品の一覧もありますのでご参照下さい。

 

 ⇒ ニール・サイモンの映画リスト

 

   

 

ただしニール・サイモンは本人が「私は本当には映画に賭けていない」(『第二章 ニール・サイモン自伝2』 p. 131)と述べているように、芝居の稽古場にはよく顔を出すことはあっても、映画の場合は脚本を監督に渡したきりで、ほとんど現場には関わらなかったそうです。実際、彼の戯曲や実際の上演を映画と比べると、やっぱり本領を発揮しているのは、劇作家としてのサイモンの方なんだなって思います。

 


 

    4. 日本での上演

 

日本では今まで数多くの劇団や劇場のプロデュースでニール・サイモンの劇が上演されてきました。第2回以降の講座では、毎回各作品の日本での上演についても解説する予定です。ここでは全10回の講座では取り上げることのない1970年代後半以降の作品を中心に選んでみました。劇団または主催別にまとめてあり、カッコ内の数字は日本での上演の年を示しています。

 

 PARCO劇場プロデュース

 

『ブライトン・ビーチ回顧録』

 (青井陽治演出/1985)

少年役を得意としていた松田洋治さん。主人公ユジーンの少年時代をとても可愛らしくかつ滑稽に演じていました。彼のスピーディーな台詞回しは劇の語り手として、ジェローム家と観客をつなぐ役目を果たしていました。テンポ良い演出、そしてお父さん役の近藤洋介さん、お兄さん役の天宮良さん、叔母さん役の三田和代さん…笑いながらも暖かく優しい心になれたこの舞台を今懐かしく回顧している私です。

 

『ビロクシー・ブルース』

 (青井陽治演出/1987)

真田広之さんが軍隊で訓練を受けるユジーンの青春時代を熱っぽく演じていました。真田さんは続く『ブロードウェイ・バウンド』(1989)でもユジーン役でした。この三部作の最終章でユジーンは兄と共にラジオ放送のコント作家になっています。しかし心の中では劇作家として“ブロードウェイを目指して”いきたいという思いが強くなっているのでした。河内桃子さん演じる母親との切ないダンス・シーンが瞼の裏に焼き付いています。

 

『ジェイクス・ウィメン』

 (青井陽治演出/1993)

小説家のジェイクは頭に浮かんだ人物がすぐに目の前に現れてしまいます。本来そこにはいるはずのない女性たちが次々と幽霊のように現れては彼と会話をし始める幻想的な設定の喜劇です。ジェイクを演じた細川俊之さんはダンディーなイメージが強かったので、サイモン劇のさえない主人公に似合わないのでは?と思っていましたが、案外観客をくすぐって笑わせるのがお上手でした。とにかく1980年代から90年代にかけては、パルコで青井演出というのがニール・サイモン上演の定番の時代でした。

 

『ロスト・イン・ヨンカーズ』

 (三谷幸喜演出/2013)

三谷幸喜さん、意外にもニール・サイモンの戯曲の演出はこれが初めて。おばあちゃん役の草笛光子さんは1992年の同作品の上演でも同じ役を演じています。いずれも頑固で厳格な表情と話し方の中に愛情深い優しさをじんわりとにじませていく演技が絶品でした。少し頭が弱いベラおばさんを演じていたのが中谷美紀さん。必死に生きていこうとする切ない感情の起伏を繊細に表現していました。この舞台の演技で読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞されています。

 

 

 PARCO劇場『ロスト・イン・ヨンカーズ』

 写真:シアターフォーラムより

 http://www.theater-forum.com/

 


 

 ル・テアトル銀座 (旧銀座セゾン劇場)

 

『おかしな二人』

 (福田陽一郎演出/1995)

PARCO西武劇場での伝説的な『おかしな二人』の舞台(福田陽一郎演出/1979)は残念ながら観ていません。この95年の再演(江守徹、杉浦直樹)や他の『おかしな二人』の上演については第4回の講座で改めて取り上げます。なお、下記の2作品の舞台の企画・制作はPARCO劇場ですが、上演されたル・テアトル銀座を記憶に留めたい気持ちもあり、あえてこちらに分類させていただきました。

 

『口から耳へ、耳から口へ  RUMORS

 (飯沢匡演出/1990)

1989年以来、海外コメディシリーズとして数多くの喜劇の舞台に立ってきた黒柳徹子さん。そのシリーズ第2作目で、初演以来繰り返し再演されている人気演目です。初演では喜劇作家の飯沢匡さんが演出しました。ミステリーのような設定の劇ですが、その正体は抱腹絶倒のファルス(ドタバタ喜劇)で、最初から最後まで笑いっぱなしでした。

 

『ローズのジレンマ』

 (高橋昌也演出/2004)

黒柳徹子さんが演じたのは、恋人を亡くして以来、スランプに陥っている大物女流作家です。主人公のローズは亡き恋人の幽霊と楽しく会話をする毎日なのですが、新作を書けない彼女にその恋人の幽霊がある提案をします。上の『ルーマーズ』のような爆笑の喜劇ではなく、しみじみと微笑みながら観るタイプの作品です。黒柳さんの個性が作者の創造したローズのキャラクターをより魅力的なものにしていました。

 

     

 


 

 テアトル・エコー

 

『サンシャイン・ボーイズ』

 (酒井洋子演出/1984)

1984年の初演は文化庁芸術祭〈優秀賞〉を受賞。85年、98年、2002年と再演された名舞台。私が観たのは2002年の舞台でした。今は亡き熊倉一雄さんと納屋悟郎さんがお見事! 喜劇俳優真打ちの演技でした。

 

『プロポーズ・プロポーズ』

 (酒井洋子演出/2012)

叙情的な味わいもあるユーモラスな家族劇です。テアトル・エコーは他にもホテルのスィート・ルームを舞台にしたオムニバス劇『プラザ・スィート』(1986/88)と『カリフォルニア・スィート』(1992)、そして『おかしな二人(男性版+女性版)』(2014)などを上演しています。

 


 

 オフィス・シルバーライニング

 

『グッド・ドクター』

 (石井恒一演出/2008)

 「ニール・サイモン全作品上演シリーズ」という画期的な企画(企画・制作=堀野三郎)がありました。1989年の『吹け青春の角笛を』(『カム・ブロー・ユア・ホーン』邦題)の上演に始まったこのシリーズは、創作年代順に作品を上演していきましたが、シリーズ半ばで残念ながら終了してしまいました。『おお星条旗娘!』(1991)など、上演されることが少ない作品を観ることができた貴重なシリーズでした。『グッド・ドクター』はサイモンがチェーホフの短編を基に一幕劇のような短いエピソードを並べた作品で、他の劇とはかなり傾向が異なる作品です。

 

    

 


 

 加藤健一事務所

 

『第二章』

 (青井陽治演出/1992)

カトケンこと、加藤健一さんと高畑淳子さん主演。それぞれ伴侶を失った中年男女の人生リセット物語です。ニール・サイモンは愛妻をガンで亡くしており、そのつらい経験が主人公の感情に反映されています。PARCO劇場でも1999年に福田陽一郎演出、西岡徳馬、浅野温子主演で上演されている作品です。

 

『ブロードウェイから45秒』

 (堤泰之演出/2014)

加藤健一、石田圭祐その他の皆さんが久しぶりにニール・サイモンの本邦初演作を上演してくれました。中でもベテラン俳優お二人(滝田裕介、中村たつ)が演じた奇妙な老人と老マダムの存在感が絶妙でした。

 

 ネルケ・プラニング

 

『スウィート・チャリティ』

 (上島雪夫演出/2016)

2016年9月23日(金)〜10月2日(日)に天王洲銀河劇場で上演されました。イタリア映画の名作『カビリアの道』を基に作られたミュージカルで、サイモンが台本を担当。お人好しで男に逃げられてばかりのチャリティの物語ですが、華やかなダンス、ノリのいい歌、切ないメロディーなどでショウアップされています。ちなみにブロードウェイ初演ではボブ・フォッシーの振付・演出でした。作品については第5回の講座で桑原美智子先生に解説していただく予定です。

 

 東宝/シーエイティープロデュース

 

『ナイスガイinニューヨーク』

 (福田雄一演出/2016)

2016年12月にシアタークリエで上演されました。第1作の『カム・ブロー・ユア・ホーン』の映画化から題名が取られていますが、原作劇の上演です。ただし福田演出は結構アドリブを入れてにぎやかに笑いを読んでいました。2016年のオンライン映画演劇大学の演劇学部推薦公演になっていましたので、解説ページをぜひご覧になって下さい。

 


 

 5. ニール・サイモンを

   考えるための13のキーワード

 

ニール・サイモンの戯曲や映画化を考える手がかりとなるキーワードを選んでみました。以下の13のキーワードになります。

 

「障害物」「対立者」

「ユーモア」「苦悩」

「負け犬たち」「愚か」

「台詞のリズム」「コンプレックス」

「ユダヤ的メンタリティ」

「自虐的笑い」

「痛くても笑う、笑うけど痛い」

「泣かないための笑い」「共感」 

 

これらのキーワードは私が読み解いて作り出したものではなく、作者自身の言葉、あるいは翻訳者、評論家の方々の文章から拾い出したものです。それらの文章を以下に引用しますのでご覧下さい。今後これらのキーワードを念頭にニール・サイモンの作品について考えていきましょう。そして皆さんも何か他のキーワードを探してみて下さいね。

 

★ニール・サイモン著、酒井洋子訳

『ニール・サイモン自伝 書いては書き直し』(早川書房)

★ニール・サイモン著、酒井洋子訳

『第二幕 ニール・サイモン自伝2』(早川書房)

 


 

  (1) ニール・サイモンの言葉より

 

私はいつでも人物たちに、彼らが予想していなかった障害物、彼らの計画を邪魔する邪魔者を用意する。人物たちの暮らしが難しくなるだけでなく、彼らを滑稽な状況に追い込む。そんな厄介な状況だ。(p.124)

 

バーナード・ショウは、対立者はどっちが正しいか観客が考えられるように同程度にすべしと言っている。(p.267)

      

自分の経験に照らしても、ユーモアというのは、非常に客観的な視点から世界を見ることができる能力である。[p.340]

 

私は自分の苦悩のなかにユーモアを見いだしてきた。そのユーモアが私の芝居を見る人々を動かすなら、人々は自分たちの苦悩の解決にもう一つの道を見つけるかもしれない。[p.183]


私は負け犬たちの芝居を書きたかった。

・・・私の言う負け犬とは、自分の運命を完全にコントロールできるのに、何度も何度も選択を間違える人たちのことである。“いやだ”と言うべき時に、“うん”と言ってしまうような人。直感的な磁石はあっちと教えてくれているのに、こっちの道を選んで必ず間違ってしまう、そんな人たち。(p.344)

 

(劇評家に笑いで苦悩をごまかしていると非難され、シェイクスピアの例をあげて反論)シェイクスピアのコメディ以上に楽しいものがあるだろうか? その目的は観客を笑わせるだけではなく、私たち人間がどれほど愚かかを教えてくれることではないのか?[p.184]

 

(俳優のジャック・レモンがサイモンの台詞のリズムについて指摘)ニールは、音楽のように明確なリズムで言葉を書いている。だからどの音符もとばすわけにはいかない。もし彼の前置詞や接続詞の“でも” “もし” “それと”“でなけりゃ”を抜いたら、その音楽は間違っているのだ。(p.276)

 


 

 (2) 翻訳者、評論家の文章から

 

 永遠の少年ニール・サイモン

  (酒井洋子)

 〜1986年PARCO劇場上演

 『ブライトン・ビーチ回顧録』

  公演パンフレット (p.19-22)より

 

(サイモンがユダヤ人であることに関して)「家庭の連帯が強い」「父権が強く、母親は子供に対して献身的」そして多分もっと重要な事は、「ユダヤ人としての強い誇りと、反面どうでもいびられる運命にあると感じる自虐的コンプレックス」そして長い迫害と流浪が育くんだ「幸せの移ろい易さの認識」。こうしたもろもろが、サイモンの喜劇のユダヤ的スパイスになっているといえよう。 こう書いてくるとユダヤ的メンタリティとは、同じく少数民族で、家族の連帯が強く、咲いて散る桜にあわれを感じ、GNPとウサギ小屋のはざまで揺れ動くコンプレックス人種の我々と、どこか似通ってはいまいか、多くの人にコンプレックスのあるデリカシーがあるからこそ、サイモンの芝居は自分のものとして共感され、愛されているに違いないし、今後も愛され続けるだろう。

 


 

 ニール・サイモンの魅力 (井上一馬)

 〜1995年銀座セゾン劇場公演

 『おかしな二人』

  公演パンフレット(p.18-19)より

 

 ニューヨーク生まれのユダヤ系アメリカ人であるニール・サイモンの笑いの特徴は、ひと言でいえば、「自分をだしにした笑い、自虐的な笑い」にある。これは多かれ少なかれ、ユダヤ系作家に共通する笑いの特徴で、自分を笑いのネタにすることは、長いあいだ異民族の中で差別され、特殊な集団として暮らしてきた彼らにとっては、生きのびるための極意だったのである。

 


 

 苦さをもくるんだ大人の笑い

 〜ニール・サイモン劇の魅力

  (萩尾瞳)

 〜『サンシャイン・ボーイズ』

  (2008年/演出:福田陽一郎)

   公演パンフレットより

 

洒脱な台詞の軽妙なキャッチボールで運ばれるサイモン劇は、笑いを弾けさせながらも、チクリと胸に刺さったり、暖かい涙を誘ったり、はたまた苦い反省を残したりする。人間の弱さや愚かしさを容赦なく見据えながら、懸命、健気の一点で愛すべき存在だと肯定し救い上げる。『ジンジャーブレッド・レディ』(70年初演)の映画タイトル、ホェン・アイ・ラーフ(笑う時だけ)』(1981/邦題『泣かないで』)が、その特徴を端的に言い当てていよう。表題は、劇中で披露されるジョークで、槍に刺された人が「痛くない?」と聞かれて答える言葉。痛くても笑う、笑うけど痛いのである。人生の喜怒哀楽を笑いの生地に混ぜ込んで焼き上げた、絶妙な味わいのケーキ。それがサイモン・コメディなのだ。

 


 

「恋の最終便」に寄せて

 ―恋だって、楽じゃない。泣かないために笑っちゃおう(佐藤綾子)

 〜1990年PARCO劇場公演

 『恋の最終便』(『浮気の終着駅』)

 (訳・演出:青井陽治)

  公演パンフレット(p.4)より

 

放っておいたらみじめな気分で落ちこんでしまいそうだから、つい口をついて出るのはちょっとした気の効いたセリフと、ささやかな笑い。こんな笑いは言ってみれば明るい一方の「サニーサイドの笑い」とは縁遠い、「泣かないための笑い」と思われる。・・・この笑いは、作者が、そして主人公が、そして観客が、共に我が身のこととしてホロ苦く笑いながら人生を生き抜く術であるのだ。

 


 

『ニール・サイモン自伝 

 書いては書き直し』

 訳者あとがき (酒井法子)より

 

 彼がシェイクスピアにぜったい負けないものがあるとすれば、それは笑いのセンス以上に、共感の芸術を産み出す力だと思う。」(p.414)

 


 

今後これらのキーワードを念頭にニール・サイモンの作品について考えていきましょう。そして皆さんも何か他のキーワードを探してみて下さいね。第2回の講座ではニール・サイモンの劇作家デビュー作『カム・ブロー・ユア・ホーン』を取り上げます。

 

ニール・サイモンの世界 (講座概要)

 

 

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『カム・ブロー・ユア・ホーン』

  • 2016.09.12 Monday
  • 22:00

 

アメリカ演劇学科の講座「ニール・サイモンの世界」の第2回『カム・ブロー・ユア・ホーン』です。講座全体の予定については、講座概略のページをご参照ください。(2016年9月12日)


 

 

     アメリカ演劇学科講座

  ニール・サイモンの世界

 

     

 

       第2回 

『カム・ブロー・ユア・ホーン』

 

 講師:小島真由美 (演劇学部専任講師)

 

 


 

 <目次>

 1.  解説

 2.  初演

 3.  登場人物/ストーリー

 4.  映画化

 5.  日本での上演

 6.  注釈

 


 

 

      1.  解説

 

ニール・サイモンが3年半の歳月をかけて書き直しを重ねに重ねて完成させた処女作です。ブロードウエイでロングランとなり、それまで兄と共作でテレビやラジオのコントを書く人気放送作家だった33歳のサイモンは一躍注目の劇作家となりました。

 

主人公はアランとバディの兄弟。弟のバディは家を黙って飛び出し、突然兄アランのアパートを訪れます。このアランがちょっとしたプレイボーイで、気の弱い奥手の弟にお前も女と遊んで“人生をエンジョイしろ”(Come Blow Your Horn)と大人の男としての楽しみを教えようとするのです。

 

主人公二人の対照的な性格や行動が、劇の後半に入れ替わり笑いを呼ぶという展開は初期のサイモン劇の特徴の一つです。『カム・ブロー…』をその兄弟版とすれば、2作目『裸足で散歩』は夫婦版、そして3作目の『おかしな二人』は友人版。“「笑えるふたり」三部作”と命名しておきましょう。待ちかねていた女性が部屋に来たと思ってドアを開けると、来られては困る人物が登場、というようなギャグはコント作家時代に学んだ笑いの手法に違いありません。

 

サイモンの作品には常に自伝的な部分がどこかにあります。この劇の一家も彼自身の家族がモデルとなっています。アランが兄のダニー・サイモン、バディが自分自身。そして頑迷なベーカー氏のモデルとなった父親は初演の舞台を観た後、息子に父親役について話したそうです。「彼がいちばんよかったな。あれにそっくりなやつをたくさん知ってるよ。」(1)

 


 

 

      2.  初演

 

 初演:1961年2月22日〜1962年10月6日  

 劇場:Brooks Atkinson Theatre

 上演回数:677回公演/プレビュー1回

 演出: Stanley Prager

 CAST:

   Hal March ... Alan

   Warren Berlinger ... Buddy

   Lou Jacobi ... Mr. Baker

   Pert Kelton ... Mrs. Baker

   Sarah Marshall ... Connie Dayton

   Arlene Golonka ... Peggy Evans

 *Internet Broadway Databaseより

   (ibdb.com 2016/9/8) 

 *写真:Playbillより

  (playbill.com 2016/9/8) 

 

    

   Peggy/Alan     Connie/Alan

 

       

   Alan/Mr. Baker  Mrs. Baker/Buddy

 

劇評: ≪ニューヨーク・タイムズ≫

『カム・ブロー・ユア・ホーン』でニール・サイモンは今はもうすたれてしまった昔懐かしブロードウェイの所産――しゃれていて、生き生きした、おかしな喜劇を作ってみせた。主題は薄っぺらだが、筋立てに無理がなく、巧く書けている。人物の性格に根ざした抱腹絶倒な見せ場もいくつかある。(ハワード・トーブマン) (2)

 


 

 

   3.  登場人物/ストーリー

 

・写真:アメリカン・センチュリー・シアター

  (ヴァージニア州, アーリントン)

  2013年上演 (演出: リップ・クラッセン) (3)

・台詞:酒井洋子訳

 『ニール・サイモン戯曲集I』

  早川書房, 1986

 

アラン・ベーカー

ト書きに「ハンサムで切れる33歳の独身」(4) とあるアランは、ニューヨークで独身生活を謳歌しているプレイボーイ。彼が22歳 のペギーを自分のアパートの部屋に誘い込もうとしている場面から劇は始まります。二人はスキー旅行から戻ったところ。アランは女優志願のペギーに自分は映画のプロデューサーの友達がいると嘘をついています。それを餌に彼女を誘惑しスキー旅行に出かけていたのでした。でもペギーへの思いが特別強いわけではありません。劇の中盤では弟に彼女とのチャンスをあっさり譲ってしまいます。

 

バディ・ベーカー

アランの弟で21歳。「控え目、自信がなく内気な」(5) 性格でまだ女性とつきあった経験がありません。いつまでも自分を子供扱いする父親との堅苦しい生活にうんざりし、荷物をまとめて家を出て兄のアパートにやってきます。でも優しい性格のバディは、父親をこわくて嫌な親と思う反面、人の良さも理解しています。電話の向こうで泣いてしまう母親の事も気がかりで、黙って飛び出してきた事に後悔の念もあるんです。やっぱり家に戻るとバディは言い出しますが、そんな弟に兄のアランが忠告します。

 

 

バディ、いつになったら人生をエンジョイする気だ? 65になったら、ありつけるのは年金だ、女じゃない。″(6)  

 

バディは大人の男になるために女をモノにしろと鼓舞され、女優志願のペギーと部屋で二人だけになるチャンスを与えられます。ハリウッドの大物プロデューサーになりすまして事を進めようとしたバディでしたが…。

 

ベーカー氏(父)      

頑固で昔気質。ロウ細工の会社を経営し、息子二人にも働かせています。バディが兄アランと同じような道楽息子になってしまうのではと気が気でありません。息子たちはいつも怒ると怖いこの父親の機嫌を気にしてばかり。

 

      

 

ベーカー夫人(母) 

控え目で夫に従うタイプの古風な女性で、バディの家出を悲しんでいます。ところが2幕では、何とこのお母さんまで家出!?

 

コニー 

プレイボーイのアランが今までの女性とは違う思いを抱く美人女性。歌手として売れない自分に見切りをつけ、アランとの結婚を強く願っています。ところが独身生活に終止符を打てないアランにははぐらされてばかり。

 

ペギー・エヴァンス

 「おめでたいほど世間知らずで、男の歓心を買うのにひたむきな22歳」(7)で女優志願。映画のプロデューサーに紹介してもらえる事を切に願っている彼女。バディをプロデューサーとして紹介され「あなた、プロデューサーにしてはとっても若く見えるわ」(8)と言いながらも親しげに彼に近づきます。バディの心臓は爆発寸前!

 

 

訪問者

ラストシーンで登場する予想外の訪問者です。台詞はありません。この50代の婦人の突然の来訪で劇は爆笑のうちに終わります。

 


 

 

      4.  映画化

 

 

 

『ナイスガイ・ニューヨーク』

 (Come Blow Your Horn/1963年)

 

 <アメリカ映画/112分>

 監督:バド・ヨーキン

 脚本:ノーマン・リア

 撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ

 音楽:ネルソン・リドル

 

<出演>

フランク・シナトラ=アラン

トニー・ビル=バディ

リー・J・コッブ=ミスター・ベーカー

モリー・ピコン=ミセス・ベーカー

バーバラ・ラッシュ=コニー

ジル・セント・ジョン=ソフィー

 

 日本公開:1964年

 DVD・ブルーレイ:日本未発売

 IMDbでの評価:6.2 (2016/9/8)

              


 

ブロードウェイ上演のロングランで注目された『カム・ブロー・ユア・ホーン』はすぐに映画化されることになりました。パラマウントは作者に映画の脚本を依頼しましたが、長年の夢であった劇作家の道を歩み始めていたサイモンにとって、ハリウッドの仕事を引き受けるつもりはありませんでした。(9) 兄のアランを演じたのはフランク・シナトラ。シナトラはそれまで数々のヒット曲やラブ・コメディ、ミュージカル映画、さらには『地上より永遠に』(1953/アカデミー賞助演男優賞受賞)や『黄金の腕』(1955)などシリアスな映画でも名演を見せていた大スターでした。ただし彼は撮影時に40代後半で、バディを演じたトニー・ビルより25歳も年上でした。逆に父親を演じたリー・J・コッブはシナトラとは4歳しか年が離れていませんでした。(10)

 

原作の場面はアランのアパートの部屋のみですが、映画はヨンカーズの自宅で荷物をまとめて家出するバディの場面から始まります。父親のベーカー氏はバディの家出に気づかず、欠勤したアランへの怒りを夫人にぶちまけています。

 

  

 

家を出たバディは兄のアパートを訪れます。このアパートの部屋がどこのセレブの部屋かと思うほど豪華で、アランの部屋というより、やはりシナトラの部屋というインテリアです。そしてこの映画で唯一アカデミー賞候補になったのが、美術・装置のスタッフでした。

 

   

 

原作でアランは父の会社を休んでしまった事を気にして、おやじは何て言っていると弟に尋ねます。するとバディは「会社じゃなんにも。でも家じゃドアをバタンバタン力まかせにしめてさ、玄関広間のシャンデリアが落ちた」(11) とその荒れ模様を報告しています。映画化では、西部劇やギャングものの悪役を得意とするリー・J・コッブがこの怒ると怖い父親役を演じています。映画ではこのベーカー氏がアランの部屋のドアを怒ってバタンと閉めて出ていってしまい、その振動でシャンデリアが落ちてしまいます。おかげでバディはそのガラスの破片を掃除するはめに…。

 

  

 

アランはバディを一人前の男にするために、まずはファッションから指南。弟を案内しながらマンハッタンの店や街角でフランク・シナトラが歌うのが、主題歌‘Come Blow Your Horn’。他はほとんど室内場面なのでここが映画オリジナルの最も映画らしい場面。リズムに乗せた場面の編集が「この作品ってミュージカル映画だったっけ?」と思わせるほど。

 

   

 

この‘Come Blow Your Horn’はサミー・カーン作詞、ジミー・ヴァン・ヒューゼン作曲のよる一曲。この二人は日本で言えば、永六輔といずみたく、あるいは阿久悠と筒美京平にたとえられる名コンビ(と言っても昭和生まれの人にしか分からない)。1950年代から60年代のアメリカで映画の主題歌を中心にヒット曲を数多く発表しています。代表作に映画『抱擁』の主題歌“All the Way”(1957年アカデミー賞歌曲賞受賞)があり、これもフランク・シナトラが歌っています。特に作詞のサミー・カーンは日本で言えば、秋元康のように名曲、ヒット曲を数多く書いた作詞家です(今度は平成生まれの人でも分かるかも)。

 

“Come Blow Your Horn”は「角笛を吹く」という意味で、元々マザーグースの歌 “Little Boy Blue”にある表現です。昼寝なんかしてないで「角笛を鳴らせ」、羊や牛の世話をしなさいという意味だったものが、ここでは「目を覚ませ、青春を謳歌しろ」の意味で使われています。では、兄アランとしてシナトラが歌う場面を見てみましょう。(12) この歌の出だしにあるmiltuetoast と meek は「意気地がない、おとなしい」というような意味です。そんな性格だとバカにされるばかりで誰にも相手にされないぞ、というような歌詞になっています。 現代風に訳すとすれば、こんな詩になるのではないでしょうか。

 

  Make like a Mister Milquetoast,

     and you'll get shut out  

    (腰抜け男に用はない)

  Make like a Mister Meek,

     and you'll get cut out

    (草食男子もいらないぜ)

  Make like a little lamb,

     and wham, you're shorn

    (羊じゃないんだ  毛を刈られるな)

  I tell ya, chum,

     it's time to come blow your horn

    (いよいよお前のショータイム!)

 

        

 

この後、アランは弟をハリウッドのプロデューサーに仕立て、電話でペギーに伝えます。それを横で聞いているバディの場面です。原作ではMGMのプロデューサーになっていましたが、映画の製作に合わせてパラマウントに変えられています。

 

アラン 彼が今ここに来ているんだ、

 あのマンハイムが。

バディ 誰だって?

アラン オスカー・マンハイムだよ。

 パラマウントのプロデューサー。

バディ ちょ、ちょっとそれは……

アラン きみが帰ったあとに来たば

 かりだ。…今夜は僕のアパートに

 泊るんだ…

 君に会ってくれるそうだ

 バディ こりゃまずい……

 

       


この後、ペギーがバディの部屋に現われ、バディの置手紙を手にして父親が来訪し、そして最後にはアパートに家族が勢ぞろい…と大筋は原作と同じ展開です。アランは電話で女性に対して「そんなセクシーな声してると逮捕されちゃうよ」というようなチャラい話し方をしていましたが、映画版のエンディングではこの台詞を再び口にするのは何とバディ。"The End?"とクレジットが最後に映し出されます。

 

バド・ヨーキン監督はシナトラの歌の場面ではさえた映像を見せてくれましたが、全体としては当時の喜劇映画と比べて大きく異なった部分や特別に優れたところはありません。シナトラはあくまでシナトラ、美女がいて当たり前。そしてバディ役のトニー・ビルは純粋な少年そのもので、喜劇の笑いを生むような演技を披露しているわけではありません。でもこの映画で思わず笑ってしまった場面が一つあります。ベイカー夫人の場面です。夫人はアパートの部屋を訪れ、バディが部屋を離れた際に一人になって戸惑っています。そこへ電話がかかってしまい、その対応に四苦八苦する、という原作第二幕にある場面です。ここは舞台でも役者が一人芝居のごとくコミカルな演技を披露できるところですが、夫人役のモリー・ピコンがいかにもおどおどした不安そうな演技でこの場面を喜劇的なものにしています。

  

この映画は作者自身が脚本を手掛けていない唯一の戯曲です。サイモンは自分の映画化の出来に満足しているとしながらも、「芝居にあったかもしれない魅力は、ハリウッドのキンキラコメディでは失われて、洒落より豪華さが先行していた」(13) と自伝で述べています。やはりこの映画はサイモン喜劇の映画化というより、フランク・シナトラの映画と呼ぶべき一作かもしれません。いっそのこと、まるまるミュージカル映画にしてすればよかったのでは? バディの歌う「バイバイ、ヨンカーズ」という家出の歌に始まり、アランの恋人コニーの「あなたのそばに」というラブソング、ペギーの歌う「映画に出たい」なんてどうでしょうか。ベイカー氏も子供二人を非難して‶bum”(ろくでなし、ダメ男)  (14)だと言ってますから、「ろくでなし兄弟」なんて曲を歌ってもらいたいですね。

 


 

 

    5.  日本での上演 

 

日本で何度か上演されている『カム・ブロー・ユア・ホーン』ですが、上演記録としてまとめてみましょう。

 

☆ 1989年1月5日〜22日

 『カム・ブロー・ユア・ホーン』

  製作=博品館劇場 

  翻訳=酒井洋子

  演出=出口典雄

  出演=矢崎滋、綾田俊樹

     小林勝也、土井裕子ほか

  会場=博品館劇場

 

☆ 1989年12月5〜14日

 『吹け青春の角笛を』

  製作=オフィス・

   シルバーライニング 

  翻訳=小田島雄志、小田島若子

  演出=小林裕 

 <出演> 

  大橋吾郎(アラン・ベーカー)

  下村彰宏(バディ・ベーカー)

  コロンビア・トップ(父)

  木村有里(母)

  山本千草(ペギー・エヴァンス)

  安藤亮子(コニー・デイトン)

  高橋明希(訪問者)

  会場=シアターVアカサカ

 

   

  

    *写真:劇場パンフレットより

      

☆ 2004年6月

 『ニューヨーク青春物語』

  企画製作=ピュア−マリー (15)

  翻訳=保坂磨理子

  演出=竹邑類

 <出演>

  飯沼 誠司(アラン)

  滝川英治/田中幸太郎(バディ)

  いとうあいこ(コニー) 

  三訳真奈美(ペギー)

  名高達男(ミスター・ベーカー)

  沢田亜矢子(ミセス・ベーカー)

  会場=三越劇場

 

 ⇒ 再演(2005年2月11日〜22日)

 <出演>

  瀬下尚人(アラン)

  野沢聡/勝野洋輔(バディ)

  汐風幸(コニー) 

  横内正(ミスター・ベーカー)

  沢田亜矢子(ミセス・ベーカー)

  会場=三越劇場 

  

 ⇒ 再演(2015年7月16日〜17日)

 

     

 

 企画製作=ピュア−マリー

 翻訳=保坂磨理子

 演出=鈴木孝宏

 会場=カメリアホール

  (亀戸文化センター)

<出演>

 大音智海(アラン)

 荒田至宝(バディ)

 愛音羽麗(コニー)

 門田奈菜(ペギー)

 ダニエル・カール (ベーカー氏)

 吉沢京子(ベーカー夫人)

    


 

      6.  注釈

 

(1) 『ニール・サイモン自伝

   書いては書き直し』

  (酒井洋子訳, 早川書房, 1997), p.146

(2) 同上, p.97 

(3) Photo by Johannes Markus

  Cast=Elliott Kashner (Alan)

  Alex Alferov (Buddy)

  Lizzie Albert (Peggy)

  Mick Tinder (Mr. Baker)

 http://www.americancentury.org/photos/horn/

(4) 酒井洋子訳

  『カム・ブロー・ユア・ホーン』

   (『ニール・サイモン戯曲集 I』p.17)

(5) 同上, p.22

(6) 同上, p.32

(7) 同上, p.17

(8) 同上, p.79

(9) 『書いては書き直し』 p.104

(10) IMDbのTriviaより

  http://www.imdb.com/title/tt0056940/?ref_=fn_al_tt_1

(11) 『カム・ブロー・ユア・ホーン』p.23

(12)   https://www.youtube.com/watch?v=YKc5Zlwk8hU

(13) 『書いては書き直し』 p.104

(14)  Neil Simon,

   The Collected Plays of Neil Simon,

   vol.1 (1971, Plume), p.68.

(15)  ピュアマリー公式サイト

    http://www.puremarry.com/

 


『カム・ブロー・ユア・ホーン』でデビューした劇作家ニール・サイモン。彼はプラザ・ホテルに面した建物の一室に部屋を借りて仕事場とし第2作の執筆に入ります。次回第3回の講座では、その2作目『はだしで散歩』を取り上げたいと思います。

 

 ニール・サイモンの世界 (講座概略)

 

 

         

 

 

『はだしで散歩』

  • 2016.09.20 Tuesday
  • 16:00

 

 アメリカ演劇学科の講座「ニール・サイモンの世界」の第3回『はだしで散歩』です。講座全体の予定については講座概略のページをご参照下さい。(2016年9月19日)


 

       アメリカ演劇学科講座

    ニール・サイモンの世界

 

       ​

 

          第3回

      『はだしで散歩』

 

 講師:小島真由美 (演劇学部専任講師)

 


 

 <目次>

 1.  解説

 2.  初演

 3.  ストーリー/登場人物

 4.  映画『裸足で散歩』

 5.  日本での上演

 6.  注釈

 


 

      1.  解説

 

ニール・サイモンが第2作の主人公をどんな魅力的な人物にしようかと考えを巡らせていた時、ふと気づいたのが妻ジョーンの存在でした。彼女の「温かさ、ユーモア、情熱、ユニークさ」(1) を舞台で表現すればいいんだとひらめいた彼は、ジョーンをモデルにしたコリーを主人公に『はだしで散歩』を書き上げます。

 

この『はだしで散歩』を書き始めた頃、サイモンは『リトル・ミー』(1962)というミュージカルの台本を依頼されて執筆しています。しかし劇作家としての第2作は『はだしで散歩』です。ブロードウェイで第1作以上の大ヒットとなり、劇作家ニール・サイモンの地位はここに確立されました。約3年半、1530回のロングランは2016年の現在でもブロードウェイのストレート・プレイの記録で歴代10位、戦後の上演でも4位となります。ちなみに第1位は1939年のハワード・リンゼイ、ラッセル・クラウス共作の古き良き家族劇『父と暮せば』でした。(2) 興行面ばかりでなくトニー賞でも評価され、演出家のマイク・ニコルズが最優秀演出家賞を受賞しました。

 

『父と暮せば』をマネして『はだしで散歩』に副題をつけるとすれば、「夫と暮せば」といったところ。まだ家具も運ばれていないアパートの新居を舞台に新婚のカップルとその母親、風変わりなアパートの住人らが織りなすおかしな日常風景がウィットに富んだせりふと共に描かれています。

 

サイモンはこの劇について次のように説明しています。「私はいつでも人物たちに、彼らが予想していなかった障害物、彼らの計画を邪魔する邪魔者を用意する。人物たちの暮らしが難しくなるだけでなく、彼らを滑稽な状況に追い込む。そんな厄介な状況だ。」『はだしで散歩』の場合は、これが空のアパートだった。それも階段のない五階の部屋。玄関前の階段を勘定に入れると六階である。」 (3)

 

『カム・ブロー・ユア・ホーン』で笑いを生んでいた障害物は、主人公の兄弟の部屋にタイミング悪く現われる家族でした。これはよくファルスに見られる手法で、浮気現場に妻や予想外の人物が訪ねてきて主人公が真っ青になって隠れる、というようなパターンです。『はだしで散歩』ではアパートの五階までの階段が障害物。笑わせてくれるのは、とにもかくにも階段を上がってきてヘトヘトになっている人たちの姿です。

 

劇の原題はBarefoot in the Park 「公園で裸足に」。これは主人公のコリーが何でも自由奔放にしてしまう女性で、公園で裸足になったという言及が台詞にあるからです。逆に夫のポールは弁護士で真面目で常識の枠からははみ出ることがない性格。障害物だけでなく、異なる価値観の対立がサイモン劇に笑いだけでない面白さと深みを与え始めました。この講座では戯曲集の邦題に合わせて『はだしで散歩』とひらがな表記にしていますが、映画の邦題は『裸足で散歩』になっています。

 

人生は障害物競争。公園を裸足で散歩なんて、そんなバカなと思うかもしれません。でもそんな自由奔放な行動にこそ、障害物を乗り越えていくパワーがあるのかもしれません。でも行き過ぎはいけないし、実際のところどちらが正しいのでしょうか。そう言えばサイモンはバーナード・ショウの言葉を伝記の中で引用していました。「対立者はどっちが正しいか観客が考えられるように同程度にすべし。」(4)  この対立が生む面白さは3作目の喜劇『おかしな二人』へと引き継がれていきます。

 

      

    映画『裸足で散歩』の冒頭場面

 


 

 

       2.  初演

 

初演

 1963年10月23日〜1967年6月25日

劇場: Biltmore Theatre

上演回数: 1530回公演 (プレビュー2回)

演出: Mike Nichols

CAST

 Elizabeth Ashley...Corie Bratter

 Robert Redford... Paul Bratter

 Kurt Kasznar...Victor Velasco

 Mildred Natwick...Mrs. Banks

 Herbert Edelman...Telephone Man

 Joseph Keating...Delivery Man 

 

       

   


 

    3.  ストーリー/登場人物

 

・写真: ウイニペソーキー・プレイハウス

 (ニュー・ハンプシャー州、メレディス)

 2013年 (演出: ブライアン・ホルペリン)(5)

・台詞:鈴木周二訳 『はだしで散歩』

 『ニール・サイモン戯曲集 I』早川書房/1986

 

戯曲冒頭のト書きには、主人公のコリーポールが新婚生活を始める部屋の舞台装置や小道具が次のように指定されています。

 

(三番街近くの東48丁目、古いブラウンストーンのビルの最上階にある、広い一室だけのアパート。部屋には家具がなにもなく、脚立、雫(しずく)受けの布、空っぽのペンキ罐がぽつんと置いてあるだけ。大きな天窓があり、2月の陽射しが明るく差し込んでいる。)(6)

 

 

この部屋はアパートの五階にありますが、この上に屋根裏の部屋があり、そこにはヴィクター・ヴェラスコという58歳の自称室内装飾家が住んでいます。自分は世界の名立たるセレブが所属するクラブのメンバーだと話しますが、どこまでが本当か分からない風変わりな人物です。なにせ彼は家賃を滞納して部屋に入れないと言ってくるぐらいですから。このヴェラスコ氏、二人の部屋の寝室経由で自分の部屋に入らせてくれとコリーに頼んできます。窓の外の出っ張りを伝わって行くというのです。天井には天窓があり、穴が空いていて風が吹き込んできます。こうした部屋の普通じゃない状況がサイモンの言うところの「障害物」として設定されていて、劇の終幕ではとてもおかしな効果を生み出します。

 

この部屋に最初に入ってくるのは、新居での生活を楽しみにしているコリー。浮き浮き気分で花束をかかえての登場です。五階までの階段を昇ってきたなんてとても思えません。若さあふれる元気一杯の女性です。次に電話を取り付けに電話会社の男がやってきます。彼はぜいぜいあえぎながら電話会社の者だと名乗り、すごい階段だとつらそうに最初のひと言。しかしまだ彼は支障なく階段を昇れたほうでしょう。次に登場するのは包みを届けに来る配達人の男なのですが、この男を60代前半と作者が指定しているからです。彼は息も絶え絶えで言葉が出ず、包みを渡すだけで部屋を出て行きます。

 

こうしてここに階段の喜劇が始まります。続いて登場する夫のポールも、コリーの母親(バンクス夫人)もかなりつらそうに最初の姿を見せるため、コリーの溌剌とした気丈な性格や発言が目立っていくばかりです。

 

 

 母親  やれ、やれ。

 コリー それほどの昇りでもないでしょ、お母さん。

 母親  そう。まあね。 …だけど、いったい何階なの? 九階?

 ポール 五階です。ビルの外のは勘定に入れないんです。

 母親  とても昇りきれるとは思いませんでした。…もし三階に知り合いでもいたら、そこへお邪魔して… (8)

 

この階段の喜劇がいかに笑えるものか、とても良く分かる舞台の映像があります。シアトルのムーア劇場で1981年に1週間だけ上演されたBarefoot in the Parkです。公演の録画映像は1982年にHBOテレビで放映されました。日本語字幕はありませんし、画質は良くありませんが、観客の笑いや劇場の雰囲気がリアルに伝わって来る貴重な映像です。全編収録されていますが、冒頭10分ほど観るだけでもこの喜劇の面白さが伝わってくると思います。

 

 Stage  Barefoot in the Park (1981) (9)         

 

こうした大変な階段をコリーと同様に物ともしないのが、第1幕の最後で登場する、上の階の住人ヴェラスコ氏です。長くこのアパートに住んでいるせいか、とても落ち着いていて紳士的なのですが、人の家の寝室と窓を通って部屋に入るという行動は尋常なものではありません。コリーが裸足で散歩をする人なら、ヴェラスコ氏は窓から帰る人。第1幕は彼が窓の外に現われ、ポールに楽しそうに手を振って進み続けるところで幕となります。

 

第2幕第1場では、このヴェラスコ氏をコリーが家に招き、ちょっとしたパーティーの場面となります。ヴェラスコ氏はバンクス夫人に挨拶をします。

 

 

 ヴェラスコ  お目にかかるのを心待ちにしておりました。お嬢さんをカクテル・パーティにお招きしたのですが、一晩じゅう、出るのはあなたのお話ばかりで。 (10)

 

パーティーでもコリーは常に陽気で元気一杯。一人ではしゃいでばかりで、ヴェラスコ氏おすすめのアルバニア料理の店にみんなで行こうと言い出します。続く第2場はレストランから戻ってきたところから場面が始まり、とうとうコリーについて行けなくなったポールと、羽目をはずそうとしない夫に我慢できなくなったコリーの夫婦喧嘩が始まります。

 

第3幕では、ヴェラスコ氏に前の晩に送ってもらって帰ったはずの母親が家に帰っていなかったことを知ってコリーが心配していると、バンクス夫人はヴェラスコ氏のバスローブを着て戻ってきます。 酔ってめまいがして、ヴェラスコ氏が連れ戻そうと抱き上げてくれたのですが、階段の途中で彼も倒れてしまい、他の部屋の「みなさんが私たちを助け上げて…(中略)…それから目が覚めたら、ヴィクター(ヴェラスコ氏)がいないの。ところが、私はそこで…あの方のバスローブを着ている。」(11)

 

バンクス夫人はヴェラスコとの出会いで自分を解放できている様子。しかしポールとの不仲を相談された夫人は、良き母としてのアドバイスも忘れる事はありません。

 コリー 終ってしまったのよ、お母さん。彼は行ってしまったの。 (…中略…)  私が出て行けと言ったのですもの。言ってしまったのよ。私の馬鹿な、この大きな口が。 (12)

 

 

 母親  あの人のために、あなたを少し押さえればいいのよ。なにもかも楽しもうとはしないこと。 …(中略)… そして彼のめんどうを見てあげる。あの人が、自分は大切な人間なのだという意識を持てるようにしてあげる。それができれば、幸せな、すばらしい結婚生活が送れるでしょう。(13)

 

母親から夫婦生活の知恵を得たコリー。そこへぐでんぐでんに酔ったポールが帰宅。コリーがそうしたように自分も裸足で公園を散歩してきたと言います。そんな夫にコリーは愛を誓うのですが、ポールは天窓へ登ってしまい、さらにはそこで動けなくなってしまい…。とここまでにして結末だけは見てのお楽しみにしておきますが、以下の映画化の解説では原作と映画のラストを比較したネタバレになっていますので、ご注意下さい。

 


 

      4.映画化

 

     『裸足で散歩』

   (Barefoot in the Park/1967年)

 

    

 

 <アメリカ映画/1時間45分>

  監督:ジーン・サックス

  制作:ハル・B・ウォリス

  脚本:ニール・サイモン

  撮影:ジョセフ・ラシェル

  音楽:ニール・ヘフティ

 

<出演>

ジェーン・フォンダ…コリー

ロバート・レッドフォード…ポール

シャルル・ボワイエ

 …ヴィクター・ヴェラスコ

ミルドレッド・ナトウィック

 …エセル・バンクス (母親)

ハーブ・エデルマン…電話会社の男

メイベル・アンダーソン

 …ハリエット (エセルの姉)

 

 日本公開:1968年

 DVD:パラマウント・ホームエンタテインメント・ジャパン

(2010/03/26発売)英語字幕付

 IMDbでの評価 7.0 (2016/9/9)

 アカデミー賞受賞・候補

助演女優賞ノミネート (ミルドレッド・ナトウィック)

 


 

アパート到着前のコリーとポール

冒頭のタイトルバックはニューヨーク、セントラルパーク近辺を走る観光用の馬車。映画がまず強調して見せてくれるのは、コリーの並々ならぬエネルギーです。走行中の馬車の座席から立ち上がり、心配するポールを構うことなく「私たち結婚したの!」と元気一杯に周囲に手を振ります。彼女は手にしていた花束を道端にいた警官に投げ、受け取った警官は「結婚したそうだ」とにこやかに本部に報告します。

馬車はニプラザ・ホテル前に着き、御者は到着を伝えますが、コリーは降りようとするポールを制して「まだキスの途中よ。」と再び濃厚なキスを続けるのでした…。

 

 

常に冷静なポールに対して、コリーは熱愛を隠すことがありません。チェックインの際にもつないでいた手を離さないので、ポールは「ちょっと、手を使うから…」とことわりを入れなければならないほど。“Please do not disturb”の札をドアノブにかけて5泊6日。ホテルの部屋にこもりっきりのハネムーンが終り、部屋からひと足早く仕事に出るポールのキスの仕方にコリーは不満げな様子です。部屋の前で「今のがキス? 本気でしてくれないなら、ここで脱ぐわよ。」とまで言い出す始末です。

 

 

ラブラブ気分が絶えることがないコリーは、アパート1階入口にある部屋別の呼び鈴の名前をペンで線を引いて消してしまいます。そしてその上に「ブラッターの恋人たち」と書き直してしまうほどロマンティックな気分に浸っているのでした。このように映画には、アパートに到着するまでの場面が追加されていて、常に気持ちと行動がずれることがないコニーの性急さがかなり強調されています。

 

 

アパートの住人たち

映画はヴェラスコ氏だけでなく、アパートの他の住人の様子もちらりと見せてくれます。例えばポールが酒屋の主人から聞いたという4階Dの住人。ここ三年間部屋からは出てくることがなく、部屋の前に毎朝マグロの缶が9個も並べられているという謎の住人です。顔は映らないものの、階段を昇る際にポールがこの妙な住人に気づきます。あるいは泥酔し警官の付き添いで帰宅した夫・・・かと思って観ていると、実は警官の方が酔っ払って帰宅した夫だったという場面など、おかしな住人だらけのおかしなアパートの映画にもなっています。

 

アルバニア料理のレストランへ

戯曲を映画化する場合、原作通りだと室内のみの単調な映像の連続になってしまいます。そこで原作では会話の中でしか出てこなかった外での挿話をシナリオに追加する傾向があります。この映画で最大の追加場面は、ヴェラスコ氏と共に一家がフェリーに乗ってレストランに出かける場面でしょう。コリーはレストランでダンサーらと共に陽気に踊り出し、その明るさは衰えることを知りません。逆にコリーと溌剌なヴェラスコ氏についていけないのが、ポールとバンクス夫人。二人はくたくたになって帰宅し、ソファでぐったりとなる、という第2幕第2場の場面へとつながります。

 

    

 

     

 

    

 

“見る人”“する人”の大げんか

原作の場面(第2幕第2場)と台詞をほぼ忠実に再現しているのがコリーとポールの口論です。今夜の外出を「馬鹿げた騒ぎ」と考えるポールは、母親がヴェラスコ氏に送られて帰っていったことも心配で、二人の仲を期待するコリーと考え方が対立します。

 

 コリー   あなたは、いったい生活を楽しむことができるのかしら、と心配しているの。

 ポール  どうして? 冬に手袋をはめたいと思うからかい?

 コリー   いいえ、そのわけはね、あなたには冒険心が少しもないからなの。あなた、自分ってものがわかってるの? あなたは、ただ見てる人。世の中には見る人とする人がいるだけ。 見る人は、する人がやってみるのを、ただ坐って眺めているのよ。 今夜のあなたは見てただけ、やってみたのは私よ。(14) 

 

     

結婚する前は、きちんとネクタイを締めて眠ってたんじゃない?(15)

     

いや、それほどでも。正式に眠るときだけさ。(16)

 

 コリー  あなたは馬鹿げていない。それが問題なのよ。木曜の夜がそうだった。あなたはワシントン・スクエアー公園で、私といっしょに裸足で歩こうとしなかった。(17)

 

ポールが公園で裸足に

夫婦喧嘩の末、ポールは家を飛び出してしまいます。原作では語られるのみで観客が目にすることのない公園での二人を、映画では実際に見ることができます。ワシントン・スクエアでやけになって酒を飲んでいたポールをコリーは見つけますが、酔ったポールは靴を脱ぎ、裸足で公園を歩き始めてしまうのでした。

 

 

部屋には何とか戻ったものの酔ってふらふらのポールは、窓から出て行き天窓の上に登ってしまいます。映画は部屋の内外のカットを交互に見せながら、二人の愛のクライマックスを盛り上げていきます。

 

 ポール  ぼくは、このアパートのみんなと同じような変人になりたいんだ。

 コリー  だめ。だめよ、ポール。…あなたには変人になんかなってもらいたくない。下りてきてほしいだけよ。

 

 

 ポール 君のことを嫌だなと思ったときでも、愛していたよ。 

 コリー だから、お願い。…お願いだから、下りてきて。

 ポール 下り…下りられないよ。…今は。

 コリー あら、どうして?

 ポール 吐きそうなんだ。

 コリー あら、だめよ。

 ポール いや、かまわないよ。

 コリー ポール。動かないで。私も行って、助けてあげる。

 

     

 

    

 

原作ではこわがるポールに対して、歌を唄って怖さを忘れてとコリーが励まします。そして「私が行くまで、歌をやめてはだめよ。」と言われた通り、ポールが歌い続けているところで幕となります。映画では通行人が下から大勢見守る中、コリーがポールの元へ無事到着。キスをした二人は町の人々から拍手をもらってジ・エンドとなります。いずれも演劇と映画それぞれの味を出していてラブ・コメディにふさわしいエンディングになっています。

 

 

最後に俳優たちの演技にふれておきましょう。コリーを演じたジェーン・フォンダは名優ヘンリー・フォンダの娘。親子でオスカーを受賞しています。先に受賞したのはジェーンの方(『コール・ガール』)でした。1960年代の彼女はセクシーな若手女優というイメージ(『バーバレラ』など)が強く、『裸足で散歩』でも原作より精悍でセクシーなアピールが強いコリーになっています。

 

ポールを演じたロバート・レッドフォードは、同じポール役でブロードウェイでの舞台にも出演していました。大きく表情を変えることがない人で、まじめな役柄をまじめに演じるのがレッドフォードでした。まるでポール役を忘れることなく二枚目人気スターの道を歩んでいったのではと思えるほどです。強盗役(『明日に向って撃て』)や詐欺師役(『スティング』)の時でさえ、常に物静かで沈着冷静な二枚目として演技を披露していました。

 

ヴェラスコ氏役のシャルル・ボワイエはフランス出身。1930年代からマレーネ・デイトリッヒ、グレタ・ガルボ、イングリット・バーグマンなど名立たる女優たちと共演してきたハリウッド・スターの一人です。『ガス燈』『ファニー』などで4回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされています。喜劇役者ではありませんが、ヴェラスコ役を余裕で演じているようにも見えます。

 

母親役を演じたミルドレッド・ナトウィックは他の三人ほど有名ではありません。しかし同じ役を舞台でも演じていた女優さんなので、母親役の喜劇的な味わいを見事に感じさせてくれる演技です。この映画で唯一アカデミー賞にノミネート(助演女優賞)されたのがナトウィックでした。

 

では最後に映画『裸足で散歩』のアメリカ初公開時の予告編(Trailer) 19)を観てみたいと思います。本編もDVDでぜひご覧になってみて下さい。

 

 


 

      5.  日本での上演

 

☆ 1979年2月8日〜19日(三百人劇場) 

『裸足で公園を』 

 企画製作=劇団昴 

 演出=樋口昌弘/翻訳=島川聖一郎

 出演=北島マヤ (コリー)

    藤木敬士 (ポール)

    福田公子 (ミセス・バンクス)

    西本裕行 (ヴェラスコ)

    関時男 (電話会社の男)

    日和田春生 (荷物配達人)

 


 

☆ 1984年10月1日〜85年12月25日

 (下北沢ロングラン・シアター) 

 *1年3か月間のロングラン

『裸足で散歩』 

 企画制作=本多劇場+平井事務所 

 演出=小林裕 (芸術選奨新人賞受賞)

  戸田恵子(コリー)

  矢島健一(ポール)

  木村有里、斎藤昌子

    (母親/ダブル・キャスト)

  湯浅実(ヴェラスコ)

  渡辺力(電話修理人)

 


 

☆ 1990年2月10〜19日

 (シアターVアカサカ)

『裸足で散歩』  

 企画制作=オフィス・シルバーライニング

 演出=小林裕 

 翻訳=小田島雄志・小田島若子

  白木美貴子 (コリー・ブラッター)

  矢島健一 (ポール・ブラッター)

  斎藤昌子 (ミセス・バンクス)

  犬塚弘 (ヴィクター・ヴェラスコ)

  渡辺力 (電話修理人)

  川北良介 (配達人)

 

  

   

    (写真:劇場パンフレットより)

 


 

☆ 1999年2月21日〜3月9日

 (銀座セゾン劇場) 

『裸足で散歩』 

 企画制作=PARCO

 演出=大野木直之

 翻訳=小田島雄志・小田島若子

  石田ひかり (コリー)

  内野聖陽 (ポール)

  草笛光子 (母親)

  宝田明 (ヴィクター・ヴェラスコ)

 

    

 


 

☆ 2003年10月30日〜11月5日

 (俳優座劇場)

 『裸足で散歩』

  企画制作:劇団NLT 

  演出:小林裕/翻訳:斎藤偕子

  今津朋子(コリー)

  渋谷哲平(ポール)

  木村有里(エセル)

  渡辺力(電話工事人)

  霜山多加志(配達人)

  池田勝(ベラスコ)

 


 

       6.注釈

 

(1) 『ニール・サイモン自伝 書いては書き直し』(早川書房/1997)p.107

(2)  Wikipediaのリストによる (2016年9月18日) https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_the_longest-running_Broadway_shows

(3)  同上,p.124

(4)  同上,p.267

(5) 『ニール・サイモン戯曲集 I』 p.139

(6)  同上,p.142

(7)  同上,p.163

(8) Barefoot in the Park, 1982 (Director: Harvey Medlinsky) Richard Thomas as Paul, Bess Armstrong as Corie, Barbara Barrie as Mrs. Ban ks, and Hans Conreid as Velasco, James Cromwell as Harry Pepper, Dick Arnold as Delivery Man (https://www.youtube.com/watch?v=PekFjgnd6H4)

(9) 『ニール・サイモン戯曲集 I』 p.201

(10)  同上,p.249   /   (11)  同上,p.257

(12)  同上,p.258   /   (13)  同上,p.220

(14)(15)(16) 同上,p.222

(17) 同上,p.264

 

 

         

 

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   演劇学部推薦公演(2020年春期)

  

   映画学部推薦作品(2020年春期)

  



  

オンライン映画演劇大学は映画と演劇を幅広く紹介、解説、研究するオンライン上の教育・文化活動です。文部科学省の認可は受けていませんが、実際の大学での授業と連携した情報や研究も掲載しています。

  

  【シェイクスピア学科】

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*英米作品賞:

「トップガン マーヴェリック」

*グローバル作品賞:

「わたしは最悪。」

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*日本映画作品賞:

「サバカン SABAKAN」

           (2022/3/21)

  


  

第6回英米演劇大賞 (オンライン映画演劇大学・演劇学部選出)は「ハリー・ポッターと呪いの子」に決定しました。最優秀イギリス演劇賞は「ザ・ウェルキン」に、最優秀アメリカ演劇賞は「冬のライオン」に、最優秀演出家賞には「ピローマン」の寺十吾が選出されています。

           (2023/3/21)

  


  

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            (2022/3/12)

  


  

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 *IMDb掲載のオールタイム・ベスト250をランキング順と公開順の一覧にしました。1位は不動の名作「ショーシャンクの空に」で、2位と3位は人気三部作をそれぞれ代表する「ゴッドファーザー」「ダークナイト」がランクインしています。

            (2022/12/12)

  


  

・ 2022年英米演劇

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ナショナル・シアター・ライブの「プライマ・フェイシィ」(8月)と「ストレイト・ライン・クレイジー」(10月)の情報を追加しました。

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 乙女よ嘆くな

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 人生は四十二から

 噫無情 レ・ミゼラブル

 孤児ダビド物語

 *以上の1936年第8回アカデミー賞作品賞候補作と同年のマルクス兄弟の喜劇『オペラは踊る』の英文シナリオ、画像集を作成しました。

            (2022/5/23)

  


  

 戦艦バウンティ号の叛乱

 三十九夜

 *1935年のアカデミー賞作品賞受賞作『戦艦バウンティ号の叛乱』とアルフレッド・ヒッチコック監督の『三十九夜』の台詞、画像、動画資料集を作成しました。

            (2022/3/30)

  


  

2021

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  賞歴に基づいた2021年

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           (2022/3/21)

  


  

2021

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           (2022/2/24)

  


  

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           (2022/2/20)

  


  

2021

・ 2021年 IMDb

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・ 第94回(2022年授賞式) アカデミー賞ノミネート作品のIMDb評価をまとめました。

           (2022/2/13)

  


  

・ 2021年(第95回)の

   キネマ旬報ベストテン

   と読者選出ベストテン

   が発表されました。

           (2022/2/7)

  


  

・ 毎日映画コンクール

  発表されました。日本映画大賞に『ドライブ・マイ・カー』が、日本映画優秀賞に『すばらしき世界』が選出されています。

           (2022/1/20)

  


  

・ 日本アカデミー賞の優

秀賞が発表されました。

           (2022/1/18)

  


  

・ シェイクスピア

      作品リスト

              (2022/1/14)

  


  

・ 第64回 (2021年)

    ブルーリボン賞

    ノミネーション

           (2022/1/4)

  


  

・ ニール・サイモンの作品を解説した講座 ニール・サイモンの世界 が再開しました。新たに『おかしな夫婦』(映画) /『二番街の囚人』/『サンシャイン・ボーイズ』が掲載されています。

              (2021/12/12)

  


  

・ 映画『真夏の夜の夢』

             (1935)

              (2021/12/12)

  

・ A Midsummer

    Night's Dream

      (1935 film)

            (英語原文版)

  


  

・ 第43回 (2021年)

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    ベストテン・各賞

           (2022/12/4)

  


  

・ 2021年報知映画賞

    発表されました。

           (2022/12/3)

  



  

・ 第7回アカデミー賞

    (1934年)

 *1934年のアカデミー賞受賞、ノミネート作品の資料です。『或る夜の出来事』『影なき男』『模倣の人生』『コンチネンタル』『白い蘭』『奇傑パンチョ』『恋の一夜』『クレオパトラ』などのページを作成しました。

            (2021/9/18)

  


  

・ 『模倣の人生』

   〜資料(Photo Story)

 *1934年のアカデミー賞作品賞にノミネートされた『模倣の人生』の英文シナリオ (画像・動画付)を作成しました。

            (2021/8/29)

  


  

・ 『影なき男』

   〜資料(Photo Story)

 *1934年のアカデミー賞作品賞を含む主要4部門候補作『影なき男』の英文シナリオ (画像・動画付)を作成しました。ストーリーの説明には、死体の発見など、ネタバレが含まれています。ただしこの映画は探偵を主人公とするミステリー映画なので、犯人を特定する最後のセリフは省略してあります。

            (2021/8/23)

  


  

・ 『或る夜の出来事』

   〜資料(Photo Story)

 *1934年のアカデミー賞作品賞を含む主要5部門受賞作『或る夜の出来事』の英文シナリオ (画像・動画付)を作成しました。

            (2021/8/15)

  


  

・ シネマ・オリンピック

 世界の映画53か国100選 (資料作成:今村直樹)

 *2015〜19年に製作された映画から54か国の100本を選び、公式サイトや配信サービスへのリンクを作成しました。

            (2021/7/23)

  


  

・ 2021年英米演劇上演

         ラインアップ

  

 *「ザ・ドクター」(11月) をリストに追加しました。(2021/7/20)

  

 *「UNDERSTUDY/アンダースタディ」(8月) /「ネバー・ザ・シナー -魅かれ合う狂気-」(9月) /「ジュリアス・シーザー」(10月) /「プロミセス、プロミセス」(11月)をリストに追加しました。パリ国立オデオン劇場の来日公演「ガラスの動物園」(9月)は招聘中止となりました。(2021/7/14)

  

 *「NT Live 2021 アンコール夏祭り」(7〜8月) /「ウエンディ&ピーターパン」(8〜9月) / カクシンハン「ナツノヨノユメ」「シン・タイタス」(8月) /「検察側の証人」(8月) /「ガラスの動物園」(9月)(12月) /「ブライトン・ビーチ回顧録」(9〜10月)などをリストに追加しました。(2021/7/6)

  


  

・ 映画

  『夜への長い旅路』論

         (篠山芳雄)

            (2021/5/17)

  


  

・ 第1回アカデミー賞

    (1927-28年)

・ 第2回アカデミー賞

    (1928-29年)

・ 第3回アカデミー賞

    (1929-30年)

・ 第4回アカデミー賞

    (1930-31年)

・ 第5回アカデミー賞

    (1931-32年)

・ 第6回アカデミー賞

    (1932-33年)

・ 第7回アカデミー賞

    (1934年)

  

  *講座「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」の資料です。リストからノミネート・受賞作品の詳しい情報・解説を見る事ができます。

            (2021/3/17)

  


  

2020

シネマグランプリ

    (オンライン映画演劇大学映画学部選出)

  *英米作品賞は「ストーリー・オブ・マイライフ  わたしの若草物語」に、グローバル作品賞は「パラサイト 半地下の家族」に、監督賞はセリーヌ・シアマ (燃ゆる女の肖像)に決定しました。

            (2021/3/10)

  


  

2020

 第5回英米演劇大賞 (オンライン映画演劇大学・演劇学部選出)は「エブリ・ブリリアント・シング」に決定しました。同公演は最優秀イギリス演劇賞、最優秀主演男優賞(佐藤隆太)、最優秀翻訳家賞(谷賢一)も受賞しました。

           (2021/2/18)

  


  

・ 2020年(第94回)

    キネマ旬報ベストテン

     が発表されました。

              (2021/2/5)

  


  

・ 第78回ゴールデン・

グローブ賞ノミネーション

     が発表されました。

              (2021/2/4)

  


  

・ オスカー・ワイルド作

大切なのはアーネスト

     (広川治 翻訳)を掲載

     しました。

              (2021/2/4)

  


  

・ 2021年英米演劇上演

         ラインアップ

 *今年の主要ストレートプレイ公演のリストを更新しました。

             (2021/2/4)

  



  

・ 第1回アカデミー賞

    候補・受賞作一覧

  *講座「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」の資料です。リストからノミネート・受賞作品の詳細な情報を見る事ができます。

           (2020/9/1)

  


  

・ スクリーン名言集

  〜映画レポートより〜

            (2020/8/13)

  


  

・ NT Live アンコール

     夏祭り2020

                 (2020/8/1)

  

・ National Theatre

     at home 配信予定

 〜英国より世界に配信〜

「英国万歳!」

「スモール・アイランド」

「夏の夜の夢」

「ル・ブラン」

「深く青い海」

「アマデウス」を配信

                 (2020/6/13)

  


  

・ 映画レポート・作品リ

   スト(テーマ別)が発表さ

   れました。

                 (2020/4/26)

  



  

・ 第1回アカデミー賞

     (1927−28年)

     女優賞ノミネート

     『港の女』

  〜映像文化学科講座〜

「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」資料7

                 (2020/4/18)

  


  

・ 第1回アカデミー賞

     (1927−28年)

     監督賞ノミネート

     『群衆』

  〜映像文化学科講座〜

「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」資料6

                 (2020/4/16)

  


  

・ 第1回アカデミー賞

     (1927−28年)

     男優賞ノミネート

     『サーカス』

  〜映像文化学科講座〜

「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」資料5

                 (2020/4/14)

  


  

・ 第1回アカデミー賞

     (1927−28年)

     芸術作品賞受賞

     『サンライズ』

  〜映像文化学科講座〜

「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」資料4

                 (2020/4/12)

  


  

・ 第1回アカデミー賞

     (1927−28年)

     女優賞・監督賞受賞

     『第七天国』

  〜映像文化学科講座〜

「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」資料3

                 (2020/4/10)

  


  

・ 第1回アカデミー賞

 (1927-28年)男優賞受賞

     『最後の命令』

  〜映像文化学科講座〜

「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」資料2

                 (2020/4/10)

  


  

・ 第1回アカデミー賞

 (1927-28年)作品賞受賞

     『つばさ』(Wings)

  〜映像文化学科講座〜

「アカデミー賞とアメリカ映画の歴史」資料1

                 (2020/4/9)

  



  

・ 『サンシャイン・ボーイズ』

    (ニール・サイモン作)

                 (2020/3/15)

  


  

・ 2020年英米演劇上演

         ラインアップ

             (2020/4/2)

  


  

・ シネマグランプリ2019

   ノミネート・受賞の発表

            (2020/3/1)

  


  

・ 英米演劇大賞2019

   優秀賞・最優秀賞の発表

            (2020/3/1)

  


  

・ 2019年 IMDb

     外国映画ランキング

  (資料作成: 今村直樹)

                 (2020/2/18)

  


  

・ 

     アナと雪の女王

    (演技コース参考動画)

            (19/11/16)

  

・ 

   グレイテスト・ショーマン

    (演技コース参考動画)

             (19/11/10)

 


  

・ 2019年 秋期

    観劇レポート対象作品

     が発表されました。

             (19/9/16)

  


  

・ 2019年 秋期

    映画レポート対象作品

     が発表されました。

             (19/9/15)

  


  

・ 2019年英米演劇上演

         ラインアップ

             (19/8/8)

 


 

・ 『英国万歳!』で

     朗読される

     『リア王』の名場面

     が掲載されました。

             (19/5/31)

 

・ 『英国万歳!』

 〜登場人物・物語の解説

     が掲載されました。

             (19/5/30)

  


  

・ ミュージカル

 She Loves Me のすべて

     が掲載されました。

             (19/5/5)

  


  

・ 映画学部主催の新講座

   アカデミー賞と

   アメリカ映画の歴史

     講座内容・予定が

     発表されました。

             (19/5/1)

  


  

・ 英米演劇大賞2018

    (受賞作・受賞者の発表)

  


  

・ シネマグランプリ2018

 (受賞作・受賞者の発表)

  


  

・ 2018年 (第92回)

     キネマ旬報ベストテン

  


  

・ 2018年 IMDb

     外国映画ベストテン

    (資料作成: 今村直樹)

 


  

・ 2017年 IMDb

     外国映画ベストテン

    (資料作成: 今村直樹)

  




  

 【シェイクスピア学科】

  

        (講師: 広川治)

 講座概要・予定

 第1回  シェイクスピア

      ってヤバくない?

 第2回  恋人たちの

     シェイクスピア

 第3回  軍隊で

      シェイクスピア?

 第4回 アクション・スターがハムレット

 第5回  俳優たちの『ハムレット』

 第6回  国王のための

     名せりふ

 第7回  宇宙の彼方の

      シェイクスピア

  




  

   【アメリカ演劇学科】

  

 『エンジェルス・イン・

       アメリカ  第1部』

      (解説: 篠山芳雄)

  

 アーサー・ミラー

  『セールスマンの死』研究

  (講師: 篠山(ささやま)芳雄)

  


  

 

  (講師: 小島真由美)

 講座概要

 作品リスト

 映画リスト

 第1回入門編

 第2回 『カム・ブロー・

         ユア・ホーン』

 第3回 『はだしで散歩』

 第4回 『おかしな二人』

 第5回

『スウィート・チャリティ』

  映画『カビリアの夜』

  初演 (1966年)

  映画化 (1968年)

                   *

 第6回 映画 『紳士泥棒

      大ゴールデン作戦』

 第7回 『星条旗娘』

 第8回『プラザ・スイート』

 第9回 『浮気の終着駅』

 第10回 『ジンジャー

      ブレッド・レディ』

  




  

   【イギリス演劇学科】

  

・ オスカー・ワイルド

  『まじめが大切』論

      (講師: 石田伸也)

  

・ テレンス・ラティガンを観る:『深く青い海』

        (講師: 広川治)

 

・ 『ローゼンクランツと

   ギルデンスターンは

         死んだ』

      (解説: 石田伸也)

  

・   ミュージカル

『ビリー・エリオット』

   〜英語の歌詞に見る

       団結、自由、信念〜

        (講師: 広川治)

  


  

    

      + 観劇レポートより

  




  

 【映像文化学科】

  

・  カズオ・イシグロ

 『日の名残り』の映画化

      (講師: 篠山芳雄)

  

・ キネマ旬報ベストテン分析

      (講師: 今村直樹)

  

  <2017年夏>

     世界の映画を観る、

        映画で世界を見る

  


  

    

  




  

 (詳細な目次については

  CONTENTSページ参照)

  

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   Music for Live Show

    (2019年10月)

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