Billy Elliot the Musical

  • 2017.08.11 Friday
  • 20:53

  夏休み特別講座

 

  ミュージカル『ビリー・エリオット』

  〜英語の歌詞に見る団結、自由、信念〜

 

   講師: 広川 治 (オンライン映画演劇大学代表)

 

 

 

 

 

 <目次>

  はじめに

  1.  Stars Look Down

  2.  Solidarity

  3.  Expressing Yourself

  4.  The Letter

  5.  Electricity

 


 

 

はじめに

 

オンライン映画演劇大学・今夏の推薦公演にもなっているミュージカル『ビリー・エリオット』(リー・ホール脚本・作詞 / エルトン・ジョン作曲 / スティーヴン・ダルドリー演出)の上演がTBS赤坂ACTシアターで始まっています(7/19-10/1)881745分の公演を観てきました。お父さん役は吉田剛太郎、ウィルキンソン先生は島田歌穂、おばあちゃん役は久野綾希子の日を選びました。

 

学生時代に最初に観たミュージカルが劇団四季の『キャッツ』で、あの「メモリー」を歌っていたのが久野さんでした。それから感動したのが東宝ミュージカル『レ・ミゼラブル』。初代のエポニーヌ役の島田さんの「オン・マイ・オウン」に涙したものです。そして蜷川幸雄さんの遺志を継いで、彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピア・シリーズの芸術監督に就任した吉田剛太郎さん。あと5作品で全37作品上演終了で、私自身も全作観劇を目指しています。

 

といった具合に、日本の舞台の歴史を代表するような皆さんが勢ぞろいです。ステージは演技、ダンス、歌のどれも素晴らしいものでした。2005年の初演もロンドンで観ていますが、決して劣ることのない出来だったと思います。華やかな都会を舞台にしたミュージカルよりも日本人の感性に(演じる方も観る方も)合っているような気がしました。ビリー役は最年少の木村咲哉くんでした。他のお兄ちゃんビリーたちに比べると、やんちゃ坊主という感じがします。でもそれが本来のビリーかもしれません。炭鉱の町の少年らしさが出ていたと思います。

 

観劇前に二つのドキュメンタリー映像を見ました。WOWOWのドキュメンタリー『ノンフィクションW 少年たちが“リトル・ダンサー”になる瞬間 』とTBSの番組『綾瀬はるかが見た!ビリー・エリオット 奇跡の600日』です。TBSの番組の方は8月23日・水曜深夜26時05分 にTBSの関東ローカルにて再放送される予定です。5人のビリー役のオーディション、稽古、舞台への思いなどを見ていたせいで、保護者になったような気持ちで、ちゃんと踊れるか心配な気持ちで見ていました。よくやった!とオンラインのお父さんはほめてあげたいです。他のビリーも個性や得意分野がぜんぜん違うので、あと4回観てみたくなりました。バレエ・ダンサーを実際に目指している加藤航世くん。ダンスだけでなく演技力がありそうな前田晴翔くん。特技が作詞・作曲で将来、歌手になれそうな歌声の未来和樹くん。そしてオーディションで合格者の4人に最初になれず、あとから5人目として加わったので、ビリーのもどかしさを表現できそうな山城力くん。それにお父さんやおばあちゃんやウィルキンソン先生が違う日もあります。観劇後のロビーで「アンコールのバレリーナ姿は柚希礼音の方がステキだったわね」などと、すでに観劇2回目のお姉さんたちの声が聞こえてきました。

 

今回の夏休み特別講座では、この『ビリー・エリオット』から主要な5曲を選び、歌詞の一部を細かく勉強していきます。英検準2級程度の講座のつもりでできるだけ丁寧に説明してみます。もちろん英語の勉強だけでなく、このミュージカルが伝えようとしているメッセージも英語の歌詞に探っていきたいと思います。

 


 

 

     1.  Stars Look Down

 

ミュージカルのファースト・ナンバー

ミュージカルは1曲目ですべてを制す、と言ってもいいのでは? 特に効果的なのがグループ・ダンシング(群舞)によるオープニングです。舞台となる街の人々が歌ったり、踊ったり。映画で言えばニューヨークの街の俯瞰撮影に始まり、対立する不良グループのシャープなダンスに始まる『ウエストサイド物語』や、L.A.のハイウエイで始まる映画『ラ・ラ・ランド』の Another Day of Sun”などがあります。こうした場面では、主人公は群舞やコーラスに参加していません。物語の舞台となる場所や時代の状況が描かれ、人々が何を求めて暮らしているのかが提示されます。そうした状況で主人公がどんな人物で、どんな思いを抱いているか歌われるのは二曲目以降です。『ウエストサイト物語』なら、トニーが恋の期待感を歌う“Something’s Coming”、『ラ・ラ・ランド』ならミアとルームメイトがパーティーで映画スターになるチャンスを狙う“Someone in the Crowd”がいい例です。

 

もちろん冒頭からまず主人公ありき、もありますよね。たとえば高校生のトレイシーがボルチモアの町中を登校しながら元気よく歌う『ヘアスプレー』。主人公と街や村などのコミュニティが一体となったオープニングです。『屋根の上のバイオリン弾き』では、ユダヤ人のトポルが村の人々のコーラスをバックに村の「伝統」を紹介していきます。『レ・ミゼラブル』では、重労働に従事させられている囚人たちと服役中のジャン・バルジャンの歌で始まります。『ビリー・エリオット』のファースト・ナンバーは、この『レ・ミゼラブル』とほぼ同じパターンで、炭鉱夫たちの歌に始まり、そこに主人公ビリーのソロのパートが挿入されている形式です。

 

希望のための接続詞“although”

ではここで、その『レ・ミゼラブル』の1曲目Look Down”と『ビリー・エリオット』の“Stars Look Down”の出だしをちょっと比較してみましょう。まずは映画『レ・ミゼラブル』から。

 

  Valjean :  Look down, look down

 Don't look them in the eye

 All:  Look down, look down

 You're here until you die

 Concict A:  No God above

 And hell alone below

 All:  Look down, look down

 There’s 20 years to go 

 

バルジャン: 下を見ろ、下を見ろ

 看守らと目を合わせるな

全員: 下を見たまま

 みんなここから出られない、死ぬまで

囚人A: 神は上におらず

 地獄だけが下にある

全員: 下を見ろ、下を見ろ

 あと20年同じ毎日。

 

次は『ビリー・エリオット』の1曲目、炭鉱夫たちが歌う“Stars Look Down”です。

 

 Through the dark

 And through the hunger

 Through the night, and through the fear

 Through the fight and years of hardship

 Through the storms, and through the tears

 And although your feet are weary

 And although your soul is worn

 And although they'll try to break you

 And although you'll feel alone

 We will always stand together

 In the dark right through the storm

 We will stand shoulder to shoulder

 To keep us warm

 

Through (〜を通って、乗り越えて)という言い方に続く単語を拾い出していくと、それらはdark (暗闇)hunger (飢え)night ()fear (恐怖)fight (闘い)hardship (苦難)storm ()tears ()。いずれも過酷な労働や争議を生き抜いてきた炭鉱夫たちの苦労がにじんだ言葉ばかりです。続く表現も「足は疲れ、心はすり切れ、打ち砕かれ、寂しい思いをする」と暗いものばかりです。しかし、ここにalthough = though (けれども、たとえ〜であろうと)という言葉があります。単純な逆接の言葉ですが「希望のための接続詞」と呼べる言葉だと思います。

 

スピーチなどには欠かせない単語で、例えばケネディ大統領も19641024日の演説で、“although children may be the victims of fate, they will not be the victims of our neglect.(たとえ子供たちが運命の犠牲者であろうとも、我々の怠慢の犠牲者にしてはならない⇒我々は見捨ててはいけない)と述べています。『レ・ミゼラブル』ではあの“On My Own(ひとりぼっち)という歌で、片思いのエポニーヌが“And although I know that he is blind, still I say, there's a way for us.(あの人が私を見てくれないのは分かっている。それでも信じてる、まだ道はあるって)と切ない望みを歌っています。

 

『ビリー・エリオット』ではalthoughの繰り返しのあとに“We will always stand together…”と仲間との連帯が歌われ、次に共通の精神として“the stars look down”のフレーズが繰り返されていきます。(the mean = みっともない、みじめなこと)

 

 And the stars look down on the mean

  and hungry

 And the stars look down and show the way

 And the stars look down

 And will stand together to see a day

 

 どんなにみじめでも

 飢えていても 

 星が俺たちを見下ろし導いてくれる

 星が見てくれている

 共に勝利の日を見るために

 

 When then stars look down

 And know our history

 When the stars look down upon our past

 And the stars look down

 And see our future bright at last

 When we'll stand as one beneath the sun

 

 星は見て知ってる 

 俺たちの歴史

 そして 俺たちの過去を

 俺たちの明るい未来が

 いつか訪れる

 俺たちが太陽の下で立ち上がる時に

 

『ビリー・エリオット』の場合、囚人たちの絶望の歌とは異なり、“look down”するのは、炭鉱夫たちではなく、天に輝く星々です。炭鉱夫は常に上を見ているのです。そして星々は炭鉱夫たちを見守っています。

 

ビリーの登場

この後しばらくして、炭鉱夫や村の人々に交じって登場していたビリーが同じメロディーでひとり歌い始めます。主人公の思いが歌われる注目の瞬間です。

 

 Take me up, and hold me gently

 Raise me up, and hold me high

 Through the night and the darkness

 Will come a day, when we will fly

 And although we've been rejected 

 And although we've been outcast

 We will find a new tomorrow…

 

ビリーは炭鉱夫以上に上を向き、高いところを目指しています。“Take me up...”以下、最初の2行は「僕を優しく抱えていて、高く空の上へ連れてって」というビリーの願望が歌われています。ただどのような高い場所へ行きたいのか、この時点ではまだ具体的には決まっていません。しかし第2幕の白鳥の湖の場面では、実際にステージで天高く舞うという演出で視覚的にビリーの目指す目標の高さが表現されています。

 

4行目が要注意です。“Will come a day…”は倒置されている文なので、主語はday。したがって「僕たちが飛び立つ日がやって来る」という意味です。そしてここでもalthoughが使われていて「たとえ見捨てられても、新しい明日を見つけ出そう」と逆境に耐える意志が歌われています。ここでビリーが歌っている希望や信念は炭鉱夫である父親の遺伝子を受け継いでいるものではないでしょうか。目指すものは最終的に違っても、強い信念を持つ血は地域と家族のものを受け継いでいると言えるでしょう。

 


 

 

       2.  Solidarity

 

ウイルキンソン先生のShine (輝け)、おばあちゃんが過去の郷愁を歌った歌に続いて、大迫力のミュージカル・ナンバーの登場です。日本版舞台では「団結を永遠に」という題で「団結だ、団結だ」と繰り返されて歌われていました。このsolidarity (団結、連帯)という単語は形容詞が“solid”が「固い、しっかりした、頑丈な」という意味であることからも分かるように、非常に強い意志や状態を伝える言葉です。1980年代にワレサが指導したポーランド民主化の先駆けとなった労働運動の組合名称がSolidarity (連帯)でした。警官たち、炭鉱夫たち、バレエ・レッスンのクラス・メンバーの3グループが舞台で交錯していくユニークなナンバーのさびの部分を見てみましょう。

 

 Solidarity solidarity, solidarity forever

 All for one and one for all, solidarity forever

 Solidarity solidarity, solidarity forever

 All for one and one for all, solidarity forever

 

All for one and one for all”は、「皆は一人のために、そして一人は皆のために」と「連帯」の定義となっています。この曲では炭鉱夫たちの闘争のための「団結」だけでなく、彼らと対峙する警官たちのsolidarityも諷刺的に歌われています。そしてウィルキンソン先生が皆を一体に踊らせるバレエ指導の精神まで。これらが一体となった歌とダンス(所々で笑える振付)のアンサンブルは見事というしかありません。日本版舞台のコーラスもダンスも最高で、コーラスのレベルはイギリスより高いのでは?と思わせる部分もありました。

 


 

 

      3.  Expressing Yourself

 

ビリーの友人マイケルのナンバー。日本版題名は「自分を表現しよう」。女装が大好きなマイケルがビリーにもドレスを着せていっしょに楽しく歌って踊ります。『プロデューサーズ』や『紳士のための愛と殺人の手びき』のようなミュージカル・コメディとは違って、シリアスな曲やドラマ部分が多いミュージカルでは、たいていどこかにコミック・リリーフ的な場面と歌が用意されています。ひと息ついて笑って楽しむ場面です。『レ・ミゼラブル』ならば盗みや詐欺を繰り返しているティナルディエ夫妻がおどけて歌う“Master of the House(宿屋の主人)がそうです。

 

しかしマイケルとビリーをティナルディエ夫妻と並べるなんて大変失礼なことをしてしまいました。“Expressing Yourself”は「団結」のテーマと一見、相反するようですが、作品のテーマの一つである「自由」な自己表現の精神です。

 

アップテンポで歌い始める部分を見てみましょう。WhatWhoのあとのthe hellon earthと同じく「いったい」の意味。Emphasise = 「強調する」ですが、米語の場合のスペルはsでなくてzです。そのあとのintegrityは「完璧な状態」なので、「最高のおしゃれをしよう」とか「カッコよくきめよう」というような訳がいいかもしれません。英国公演のDVDの字幕では「上手にコーディネイトしよう」となっています。Cosは口語で使われるbecauseの短縮形で、Cos =Coz = cause = becauseです。

 

 What’s the hell wrong with expressing

  yourself?

  自分を表現して何が悪い?

 Being who you want to be?

  なりたいものになったって

 Will anybody die if you put on a dress?

  ドレスを着たって誰か死ぬわけじゃないし

 Who the hell cares if your blusher’s a mess?

  ほほ紅が変でも誰も気にしないよ

 Start a new fashion, buck all the trends

  最新ファッションでおしゃれをしよう

 Emphasise integrity

  ばっちりきめようよ

 Cos what’s the hell is wrong with

  expressing yourself

  自分を表現して何も悪くないんだから

 For wanting to be me?

  自分が自分になりたいだけなんだから

 


 

 

      4.  The Letter

 

哀愁漂うメロディーに泣かせる手紙の内容…感動的な場面です。病気で亡くなったお母さんが生前にビリーに残していた手紙をウィルキンソン先生が声に出して読みます。その朗読が歌に変わっていき、最後には舞台袖に現われたお母さんも歌に加わります。その冒頭部分を見てみましょう。ポイントは未来完了形という文法が使われているところです。このまま死んだら「将来、〜することになってしまう」という将来完了してしまう、終わってしまう気持ちを表現するためにwill have +過去分詞の形が繰り返されています。

 

それからもう一か所注目すべき点があります。“Stars Look Down”の冒頭の表現:Through the dark, and through the hungerthroughがここではthrough everythingという言い方で使われています。ここには「どんな時でも、常に」見守っているというお母さんの優しい気持ちが込められています。日本語訳を英国舞台のグッとくるDVD字幕から引用して付け加えておきます。

 

 Mrs Willkinson:  Dear Billy,

  I must seem a distant memory…

 (Billy:  Which is?) …which is probably

  a good thing

 And it will have been a long…

 (Billy …long time)

 

 ウイルキンソン先生: “愛しいビリー 

 ママは もう遠い思い出ね

 (ビリー: でも…) でも それでいいの 

 18歳に… (ビリー: …なるまで)

 

 And I will have missed you growing

 And I'll have missed you crying

 And I'll have missed you laugh

 Missed your stamping and your shouting

 I have missed telling you off

 

 But please, Billy

 Know that I was always there

 I was with you through everything

 And please, Billy…

 Know that I will always be proud

  to have known you

     

 成長が見たい

 あなたが泣いたり

 笑う姿を見たい

 ケンカしたり叫ぶ姿を見たい

 あなたを叱りたい

 

 忘れないで

 ママはいつも見守ってるわ

 あなたのそばにずっといる

 ビリー

 どんな時もママは一緒よ

 


 

 

             5.  Electricity

 

このミュージカルの主題歌と言える歌です。作曲したエルトン・ジョンもバラードとしてライブなどで歌っています。歌の最後に“I’m free”とあるように、ビリーの「自由」への強い「信念」が歌に続くダンスで力強く表現されていきます。劇のクライマックスと呼んでもいいと思います。炭鉱夫たちの団結や強い信念がビリーへの応援に発展し、“Expressing Yourself”でマイケルが歌っていた「自由」の精神がビリーの中でリアルなものとして輝き始めます。

 

ここに「団結」「自由」「信念」に三つが結びつき、ミュージカル『ビリー・エリオット』のメッセージが完成します。そしてやっぱり星々がビリーと炭鉱の町を見守ってくれているんだな、と観客も実感できるようになっています。ラストシーンでは、亡くなったお母さんが町を離れるビリーを見送りに現われます。ちょっと感傷的ですが、ビリーのお母さんも炭鉱町を見守ってくれている星の一つなんだな、と考えると一層、感慨深いものがあります。

 

では実際に日本版ではどのような歌詞で歌われているのか、劇場プログラムに掲載されている訳詞と会話調の直訳と比較して見ていきましょう。ビリーはオーディションの最後で「ねえ、ビリー、ダンスをしている時はどんな気持ちになるんですか?」と質問され、自分の今の気持ちを歌い始めます。

 

 I can't really explain it

 I haven't got the words

 It's a feeling that you can't control

 

 本当に説明できません

 言葉が見つからないんです

 抑えられない感情なんです

 

これでは字幕ならともかく、歌えませんよね。サントラ盤のCDを買ったり、あるいは配信で聞いてみたりして、実際にメロディーを聞いて歌ってみるとよく分かると思います。日本版舞台の高橋亜子さんの訳詞では次のようになっています。

 

 上手く言えません

 言葉にできない

 抑えきれない気持ち

 

やっぱりミュージカルの歌ならこういう文体になりますよね。メロディーに言葉がきちんと収まっています。ただし最初から独立した歌のように意訳して、さらに歌いやすくしたら、どうなるでしょうか。たとえば、次のように。

 

 ダンスをすると

 心の中で

 言葉が消えていく

 

続く同じメロディーの繰り返しでは、言葉だけでなく自分の存在まで消えていきます。I supposeは「僕はたぶん〜だと思う」、who you areは「本来の自分」という意味です。英語ではyouと言っても目の前の相手に限らず、仮の主語の場合もあるので「あなた」というより「一般に誰でも」という意味での主語です。ここではビリー自身のことを間接的に指しています。以下、原文に<直訳><舞台訳詞>、さらに意訳した版をこの大学の<オンライン版訳詞>として並べてみましたので、少しずつ比べながら見ていきましょう。

 

 I suppose it's like forgetting

 Losing who you are

 And at the same time

 Something makes you whole

 

<直訳>

 たぶんそれ(僕の気持ち)自分を忘れて

 失ってしまうことかも

 同時に

 何かが自分を完璧(=whole)にしてくれる

 

<舞台訳詞>

 自分をなくすような 

 忘れるような

 ほんとの僕に

 なるような

 

<オンライン版訳詞>

 どこにいるのか 

 教えてほしい

 さまよいながら 

 自分を探す

 

 It's like that there's a music

 Playing in your ear

 And I'm listening, and I'm listening

 And then I disappear

 

<直訳>

 まるで音楽が

 耳の中で演奏されているみたい

 そして僕はそれを聞いて、聞いて

 それから消えていく

 

<舞台訳詞>

 耳の奥で

 音楽が鳴り出して

 追いかける 追いかける 

 自分が消える

 

<オンライン版訳詞>

 耳の奥に 

 ダンスのメロディ

 もう僕は 

 ここにいない

 

 And then I feel a change

 Like a fire deep inside

 Something bursting me wide open

 Impossible to hide

 

<直訳>

 そうするとある変化を感じる

 まるで体の奥に炎があるみたい

 何かが僕を燃やし、僕を広く開けるから

 隠れることができない

 

<舞台訳詞>

 僕は変わる 

 何かが燃えて 

 僕を開く

 もう逆らえない

 

<オンライン版訳詞>

 炎が燃えて

 僕は変わる

 新しい自分が

 見えてくる

 

 And suddenly I'm flying, flying like a bird

 Like Electricity, electricity

 Sparks inside of me

 And I'm free, I'm free

 

<直訳>

 すると突然僕は飛び立つ、鳥のように

 まるで電気、電気が

 自分の中で閃いているよう

 そうして僕は自由、僕は自由だ

 

<舞台訳詞>

 僕は舞い上がる 鳥のように

 まるで電気 そう電気 

 胸で弾けて

 僕はもう自由

 

<オンライン版訳詞>

 鳥のように 空を羽ばたく

 体の中を 流れる電気

 輝くハートで

 自由になれる

 

この後に歌詞はさらに続きますが省略します。Electricity (電気)という感覚を言葉で表現するのは、結構むずかしいですね。そう言えば「君の瞳は一万ボルト」なんて昭和のヒット曲がありました。

 

以上、『ビリー・エリオット』の英語の歌詞を見てきました。かつて劇団四季が『ジーザス・クライスト・スーパースター』をオリジナルのようにジーンズをはいた現代版と斬新な歌舞伎のようなメークや衣装の日本版の二種類を同時期に上演したことがありました。『ビリー・エリオット』の日本版舞台の今回の訳詞は、イギリス側の意向もあってか、他のミュージカルに比べて単語を一語一語大切にした訳詞になっていました。でもこの際、俳優にダブル以上のキャストが許されるなら、再演の際には翻訳も複数のバージョンを使ってみたら?…なんて無理かもしれませんね。

 

それから翻訳で今回の上演で注目した点がもう一つ、会話部分の日本語訳です。今回の舞台の台詞は炭鉱町のイメージから、九州弁に訳されていました。『ビリー・エリオット』の英語の発音は、労働者階級の話し方で炭鉱町の地方訛りなので、例えば、“Stars Look Down”ではhungerが「ホンガー」のように発音されていたりします。英会話の教材にはできないような英語です。オードリー・ヘップバーン扮する花売り娘のロンドン訛りが音声学者によって矯正されていく『マイ・フェア・レディ』からも分かるように、イギリス英語と言っても多種多様です。英国より少しだけ広い面積の日本でもそれは同じこと。

 

ですから、いっそのこと、朝ドラの『あさが来た』に出てきた三池炭鉱あたりを舞台にした翻案版を製作して、「江藤光」少年の物語 (英題:Hikaru Eto)にしたら…誰も見たくないか。現代版をアメリカで作って、マギー・サッチャーの代わりに「メリー・クリスマス、ドナルド・トランプ」と移民の多い町の人々に歌ってもらった方が面白いかもしれませんね。

 

大ざっぱで歌謡曲のような訳詞ですが“Electricityの<オンライン版訳詞>をまとめて掲載しておきます。ホリプロの公式サイトでElectricityのプロモーションビデオが見られますので、映像を参考にしてぜひ歌ってみて下さい。

 

ミュージカル『ビリー・エリオット』公式サイト

 

 

 ダンスをすると 心の中で

 言葉が消えていく

 どこにいるのか 教えてほしい

 さまよいながら 自分を探す

 

 耳の奥に ダンスのメロディー

 もう僕は ここにいない

 炎が燃えて 僕は変わる

 新しい自分が 見えてくる

 

 鳥のように 空を羽ばたく

 体の中を 流れる電気

 輝くハートで自由になれる

 

 

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contents

  

    演劇学部推薦公演(2019年秋期)

   

  

    映画学部推薦作品(2019年秋期)

   

  



  

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演劇を幅広く紹介、解説、研究する

オンライン上の教育・文化活動です。

文部科学省の認可は受け ていませんが、実際の大学での授業と連携した情報や研究も掲載しています。

  



  

   <9月の推薦作品>

  ・ 演劇学部推薦公演

  ・ 映画学部推薦作品

  



  

     <新着記事・講座>

  

New

・ 2019年 秋期

      観劇レポート対象作品

     が発表されました。

             (19/9/16)

New

・ 2019年 秋期

      映画レポート対象作品

     が発表されました。

             (19/9/15)

New

・ 2019年 IMDb

     外国映画ベストテン

    (資料作成: 今村直樹)

             (19/8/24)

Update

・ 2019年英米演劇上演予定

             (19/8/8)

 

・ 『英国万歳!』で

     朗読される

     『リア王』の名場面

     が掲載されました。

             (19/5/31)

 

・ 『英国万歳!』

   〜登場人物・物語の解説

     が掲載されました。

             (19/5/30)

 

・ ミュージカル

   She Loves Me のすべて

     が掲載されました。

             (19/5/5)

 

・ 映画学部主催の新講座

   アカデミー賞と

     アメリカ映画の歴史

     講座内容・予定が

     発表されました。

             (19/5/1)

 

・ オンライン映画演劇大学

     英米演劇大賞2018

    (受賞作・受賞者の発表)

 

・ オンライン映画演劇大学

     シネマグランプリ2018

    (受賞作・受賞者の発表)

 

・ 2018年 (第92回)

     キネマ旬報ベストテン

 

・ 2018年 IMDb

     外国映画ベストテン

    (資料作成: 今村直樹)

 


  

 

 

 〜優秀賞の発表と選評〜

  


  

・ 2017年 IMDb

     外国映画ベストテン

    (資料作成: 今村直樹)

  




  

<過去の主要記事・講座>

  

     【シェイクスピア学科】

  

        (講師: 広川治)

・ 講座概要・予定

・ 第1回  シェイクスピアって

                 ヤバくない?

・ 第2回  恋人たちの

                 シェイクスピア

・ 第3回  軍隊で

            シェイクスピア?

・ 第4回  アクション・スター

            がハムレット

・ 第5回  俳優たちの

                 『ハムレット』

・ 第6回  国王のための

                 名せりふ

・ 第7回  宇宙の彼方の

                 シェイクスピア

  




  

     【アメリカ演劇学科】

  

・  『エンジェルス・イン・

       アメリカ  第1部』

      (解説: 篠山芳雄)

  

・  アーサー・ミラー

  『セールスマンの死』研究

  (講師: 篠山(ささやま)芳雄)

  


  

 

  (講師: 小島真由美)

・ 講座概要

・ 作品リスト

・ 映画リスト

・ 第1回入門編

・ 第2回 『カム・ブロー・

              ユア・ホーン』

・ 第3回 『はだしで散歩』

・ 第4回 『おかしな二人』

・ 第5回

    『スウィート・チャリティ』

 原作: 映画『カビリアの夜』

          初演(1966年)

映画『スウィート・チャリティ』

                   *

・ 第6回 映画 『紳士泥棒

          大ゴールデン作戦』

・ 第7回 『星条旗娘』

・ 第8回 『プラザ・スイート』

・ 第9回 『浮気の終着駅』

・ 第10回 『ジンジャー

               ブレッド・レディ』

  




  

     【イギリス演劇学科】

  

・  ワイルド流喜劇のレシピ

      オスカー・ワイルド

      『まじめが大切』論

      (講師: 石田伸也)

  

・ テレンス・ラティガンを観る

         『深く青い海』

        (講師: 広川治)

 

・    『ローゼンクランツと

ギルデンスターンは死んだ』

      (解説: 石田伸也)

  

・   ミュージカル

    『ビリー・エリオット』

   〜英語の歌詞に見る

       団結、自由、信念〜

        (講師: 広川治)

  


  

    

      + 観劇レポートより

  




  

 【映画学部・映像文化学科】

  

・  カズオ・イシグロ

   『日の名残り』の映画化

      (講師: 篠山芳雄)

  

・ キネマ旬報ベストテン分析

      (講師: 今村直樹)

  

  <2017年夏>

     世界の映画を観る、

        映画で世界を見る

  


  

    

  




  

 (詳細な目次については

  CONTENTSページ参照)

  

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   演劇学部推薦公演

    (2019年8月)

  

   ヘンリー六世 三部作

       リチャード三世

       (カクシンハン)

作: シェイクスピア

翻訳: 松岡和子

演出: 木村龍之介

主演: 河内大和、真以美

        (7/25〜8/12)

  


  

       人形の家part2

         (パルコ)

 作: ルーカス・ナス

 翻訳: 常田景子

 演出: 栗山民也

 主演: 永作博美

        (8/9〜9/1)

  


  

    ブラッケン・ムーア

          (東宝)

作:アレクシ・ケイ・

         キャンベル

翻訳: 広田敦郎

演出: 上村聡史

主演: 岡田将生、木村多江

        (8/14〜27)

  

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 映画学部推薦作品 (新作)

  

 (2018年洋画推薦作品)

   


  

 『スリー・ビルボード』

   2/1〜  公式サイト

 『タクシー運転手

    約束は海を越えて』

   4/21〜  公式サイト

 『フロリダ・プロジェクト

     真夏の魔法』

   5/12〜  公式サイト

 『ワンダー  君は太陽』

   6/15〜  解説ページ

 『ブリグズビー・ベア』

   6/23〜  公式サイト

  


  

 『判決、

     ふたつの希望』

   8/31〜  公式サイト

 『1987、

     ある闘いの真実』

   9/8〜  公式サイト

 『バッド・ジーニアス』

   9/22〜  公式サイト

 『search サーチ』

   10/26〜  公式サイト

 『ボヘミアン・ラプソディ』

   11/9〜  公式サイト

 『アリー/ スター誕生』

   12/21〜  公式サイト

  



  

 (2019年1月推薦作品)

 『バジュランギおじさんと、

   小さな迷子』

   1/18〜  公式サイト

  


  

 (2019年2月推薦作品)

 『メリー・ポピンズ

     リターンズ』

   2/1〜  公式サイト

 『女王陛下のお気に入り』

   2/15〜  公式サイト

  


  

 (2019年3月推薦作品)

 『グリーンブック』

   3/1〜  公式サイト

 『ブラック・クランズマン』

   3/22〜  公式サイト

  


  

 (2019年4月推薦作品)

 『僕たちのラストステージ』

   4/19〜  公式サイト

 『幸福なラザロ』

   4/19〜  公式サイト

  


  

 (2019年5月推薦作品)

 『ドント・ウォーリー』

   5/3〜  公式サイト

 『僕たちは希望という

      名の列車に乗った』

   5/17〜  公式サイト

  


  

 (2019年6月推薦作品)

 『SANJU/サンジュ』

   6/15〜  公式サイト

 『パピヨン』

   6/21〜  公式サイト

  


  

 (2019年7月推薦作品)

 『COLD WAR

      あの歌、2つの心』

   6/28〜  公式サイト

 『Girl/ガール』

   7/5〜  公式サイト

  


  

 (2019年8月推薦作品)

『存在のない子供たち』

   7/20〜  公式サイト

 『シークレット・

      スーパースター』

   8/9〜  公式サイト

  

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